M&Aを成功させるためには、買い手と売り手の間での交渉が極めて重要です。
M&Aは、交渉フェーズで「買収価格」「取引条件」「経営統合後のビジョン」などを話し合った後に確定されます。
この記事では、M&Aにおける交渉のポイントについて詳しく解説します。M&Aの交渉に興味がある方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
M&Aの交渉ポイントとは?
M&Aの交渉で最も注目すべきことは、「企業価値に見合った価格」で交渉できるかどうかです。
価格はM&Aの交渉で中心的なポイントであり、企業の真の価値を反映することが求められます。適切な価格設定は、売り手にとっては資本の最適化、買い手にとっては投資リターンの最大化します。
M&Aの交渉は複雑で多面的なプロセスであり、価格交渉の重要性、準備の徹底、そして専門家との連携は、成功するための鍵となります。
M&Aにおける交渉は「価格」に関する話が中心です。価格によってM&A可能な企業の選択肢が大きく代わります。
よって、M&Aの交渉前は、買い手側は「どの程度の金額を準備できるのか?」、また売り手側は「企業価値に見合った価格で売却できるのか」を事前に決めておく必要があります。
その上で、交渉する際は以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 相手企業の本音を引き出す
- 相手企業の情報を調べる
- 譲歩可能な価格を決める
相手企業の本音を引き出す
M&Aにおける交渉のポイント1つ目は、「相手企業の本音を引き出す」ことです。
M&Aの交渉では、相手企業の真の意図や考えを理解することが重要になります。
実際の価格交渉において、相手企業が提示した買収価格が高すぎると感じた場合、その背後にある理由を探ることが必要です。
例えば、「提示された価格は何をもとに設定したのか」を尋ねることで、相手企業が自社の価値をどのように評価しているかを知ることができます。
交渉を行う際は、相手企業の真の意図や考えを理解し、本音を引き出すことを意識して交渉しましょう。
相手企業の情報を調べる
M&Aにおける交渉のポイント2つ目は、「相手企業の情報を調べる」ことです。
交渉前には、「相手企業の事業内容」「財務状況」「市場環境」などを調査しておくことが重要になります。
実際のM&A交渉前の過程で、M&A専門家から提示されたティーザーやノンネームシートから相手企業の情報をある程度把握することができます。
交渉の方向性を見定めるためにも、事前に相手企業の情報を調べた上で、交渉しましょう。
ティーザーやノンネームシートについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
譲歩可能な価格を決める
M&Aにおける交渉のポイント3つ目は、「譲歩可能な価格を決める」ことです。
交渉では、どこまで譲歩できるか、つまり最低限受け入れ可能な価格をあらかじめ決めておく必要があります。
実際に交渉で行き詰まったときでも、譲歩可能な価格を決めておけば、別の企業も視野に入れた上で、冷静に対応することができます。
M&Aの交渉に入る前には、専門家の意見を参考にした上で、譲歩可能な価格を決めておくことをおすすめします。
M&Aの交渉は、「相手企業の本音を引き出す」「相手企業の情報を調べる」「譲歩可能な価格を決める」の3つを意識するだけ、より交渉を有利に進めることが可能です。
しかし、M&Aの交渉が決裂してしまうと、余計に費用がかかり、会社の経営を圧迫する可能性も考えられます。
そのため、予め交渉が有利に進めるような準備と最低限譲歩可能な価格を見極めておきましょう。
また、交渉の成功確率を少しでも上げたい方は、事前に専門家へ相談しておきましょう。
M&Aの交渉内容
M&Aの交渉は非常に複雑で多岐にわたるプロセスがあり、買い手と売り手の間で多くの項目についての交渉が行われます。
ここでは、買い手と売り手の主な交渉内容、交渉前の準備事項、および交渉前のお勧めの相談先について詳述します。
ここでは、M&Aにおける交渉の内容をそれぞれの買い手と売り手の視点から解説します。
- 買い手の交渉内容
- 売り手の交渉内容
買い手の交渉内容
買い手側の立場から見たM&Aの交渉は、取引の価値最大化とリスク最小化を目指すことが目的です。M&Aの交渉は複雑なため、適切な準備と専門家の力が必要になります。
M&Aの買い手の交渉内容は以下の通りです。
- 価格交渉:企業の価値を正確に評価する(過去の財務実績、将来の収益予測、業界の動向、競合他社との比較など)
- 支払い条件:支払い条件を明確に交渉する(現金一括、分割支払い、株式交換など)
- 負債と資産の取扱い:負債の取り扱いや買収後の資産の管理に関する明確な合意が必要になる
- 保証・補償:売り手からの保証や補償を交渉することによって、買い手は未来のリスクを最小化することができる
買い手の買収価格は、交渉の最も重要な要素の1つです。自社の事業戦略や財務状況、市場環境などを考慮して、適切な価格を提案することができれば、自社にとって最高の投資先となります。
買い手の交渉前の準備は、「情報収集」と「交渉戦略の策定」の2点を必ず行いましょう。
- 情報収集:買収対象企業の財務諸表、業務報告、契約書などの重要な文書を収集および分析
- 交渉戦略の策定:買収価格、支払い条件、保証・補償条件などの交渉戦略を明確に策定
買い手はM&Aの交渉前には、必ずM&Aの専門家(コンサル)やアドバイザリーに相談しておくことをおすすめします。
買い手は、専門家と連携して適切な準備を行うことで、有利な交渉を進めることができます。
売り手の交渉内容
売り手側のM&A交渉は、企業の価値を最大化し、事業の未来に対する期待を保護することが目的です。交渉は多面的であり、準備と専門的なアドバイスが重要です。
売り手の交渉内容:
M&Aの売り手の交渉内容は以下の通りです。
- 価格交渉:企業の価値を適切に評価し、強固な根拠を持って交渉することが重要
- 支払い条件:支払い条件を明確に交渉する(現金一括、分割支払い、株式交換など)
- 保証・補償:買い手からの保証や補償の要求に対し、可能な限りリスクを低減する
- 運営に関する条件:売却後の企業の運営や従業員の待遇、ブランドの利用などについて交渉する
売り手の交渉前の準備は、「情報収集」と「交渉戦略の策定」の2点です。
- 情報収集:企業価値評価や業界分析を通じて、交渉の根拠を準備する(財務諸表、契約書、企業戦略などの重要文書)
- 交渉戦略の策定:売却価格、支払い条件、保証・補償条件などの交渉戦略を明確にする
売り手としては、事前の準備と専門家との連携を通じて、有利な条件での売却を目指すことが重要です。また、適切な交渉戦略と準備を通じて、企業の真の価値を買い手に理解させることも必要になります。
M&Aの交渉の流れ
M&Aの交渉は仲介会社などのサポートを受けながら進めていきますが、実際に交渉を行うのは経営者自身なので、交渉の流れを理解しておく必要があります。
MM&Aにおける交渉の進め方は以下の通りです。
- 事前準備
- 専門家に相談
- 意向合意書の締結
- 価格交渉
- 最終契約の締結
事前準備
M&Aの交渉前は、自社の事業戦略や財務状況、市場環境などを評価し、M&Aが自社にとって最善の選択であるかを分析しておく必要があります。
また、自社の評価額を算出し、買収価格の目安を設定しておきましょう。
次に、相手企業の事業内容、財務状況、市場環境などを調査しておくことが重要です。これにより、交渉の方向性を見定めることができます。
専門家に相談
続いて、事前準備が完了したら、必ず専門家に相談しましょう。
専門家への相談する内容は、以下の通りです。
- 必要な情報と書類
- 買収価格の設定
- 取引条件の交渉内容
以上の相談をした上で、相手企業との交渉を行いましょう。
意向合意書の締結
M&Aの仲介業者をはさみ、買い手と売り手の間で初期的な意向合意書を締結する場合があります。意向合意書は、買い手側が売り手側に対してM&Aを行う意思があることを示す書類のことです。
意向合意書の主な内容は以下の通りです。
- 具体的な取引条件
- スケジュール
順調ならば、経営者同士のトップ面談〜デューディリジェンスまでスムーズに行われます。
価格交渉
次に、デューデリジェンス(買収監査)の結果に基づいて、ターゲット企業との間で価格交渉を行います。
「M&Aにおける交渉のポイントとは?」でも解説しましたが、自社がどこまで譲歩できるかによって交渉の進み具合が変わってきます。
最低限受け入れ可能な価格をあらかじめ決めておくことで、最終的な契約をするかどうか判断しましょう。
最終契約の締結
買い手候補との交渉が進み、最終的な取引条件が決まったら、最終契約書を締結します。
最終契約書には、取引価格や支払い方法、取引後の経営体制など、具体的な取引内容が詳細に記載し、クロージング後、M&Aの取引が完了になります。
M&Aの基本的な進め方に関しては、以下の記事で解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
M&Aの交渉の注意点
M&Aの交渉をする際の注意点は以下の通りです。
- 交渉前段階
- 交渉相手との最初のやり取り
- 相手と条件が折り合わない時
交渉の前段階
M&Aは目的ではなく手段です。
M&Aを通して実現すべき目標があいまいなままで交渉に進んでしまうと、コストやリスクの評価がいいかげんになってしまったり、M&A契約そのものが目的化してしまったりして、不満足な結果や本末転倒の事態に陥りかねません。
したがって、交渉の前段階から、買収・売却後のビジョンを視野に入れて交渉準備を進めておきましょう。
交渉相手との最初のやり取り
実際に交渉相手と直接的なやり取りを行うのは、「トップ面談」のときです。
トップ面談時には、すでに企業に関する詳細な情報を得ている状態ですが、数字のデータや企業情報などだけではわからないことが、トップ面談の場で経営者に会うことで得られます。
トップ面談ではM&Aの細かな条件を交渉する場ではなく、企業として重要視しているポイント、相手が信頼できるかどうか、経営理念や価値観はどのようなものか、といった数値化できない、目に見えない情報を得るために行います。
トップ面談時は、相手企業を知ることを念頭に交渉しましょう。
相手と条件が折り合わない時
相手と契約内容について合意できない場合には、外部環境を考慮したうえで契約締結についての交渉を行います。
その上で、譲渡候補先との交渉がスタートするわけですが、その中で価額や条件の折り合いがつかず、最終局面において契約できずに終わる可能性があります。
もちろん価格や条件に合わない場合は、無理に契約する必要はありませんが、途中までにかかる費用や時間を考慮すると、大きな損失になります。
そのため、交渉に入る前の企業選びの段階でしっかりとした事前調査が必要です。