M&Aに関わる業作は、多々ありますが、その中でもFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)について知らない方が多いと思います。
この記事では、M&AにおけるFASの意味と役割、そしてその他の関連サービスとの明確な違いについて解説していきます。
M&Aの成功のためには、それぞれの専門家の役割を理解し、適切に活用することが鍵になるので興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
M&AにおけるFASとは何か?
M&Aの世界でよく耳にするFASは、「Financial Advisory Services」の略で、日本語で「財務アドバイザリーサービス」と訳されます。
FASは、企業や個人に対して、財務に関連するアドバイスやサービスを提供する専門家や組織のことを指します。FASは、経済の健全性や成長の機会を確保し、リスクを管理するための戦略的な財務の意思決定のサポートを行います。
FASの現在の動向
近年、企業間のM&A活動が増加する中で、FASの需要も増大しています。特に国際的なM&Aが盛んに行われる中で、異なる会計基準や税制、業界背景を持つ企業同士の取引において、専門的な財務的アドバイスが求められるケースが増えています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の影響も受け、FASはデータ分析技術を駆使したサービス提供にもシフトしています。
例えば、先進的なデータ分析ツールを使用して、取得先企業の財務データの深堀りや将来の収益予測など、より精緻な分析が行われるようになっています。
FASが果たす役割
FASは、企業を財務の視点から全面的にサポートします。M&Aのアドバイスだけでなく、企業再生、財務不正防止体制の構築、経営戦略の策定など、幅広い業務を手掛けています。
特に、以下の内容に関わる業務が多いです。
- デューデリジェンスの実施
- 企業価値の評価
- 財務戦略の策定サポート
- 契約書のチェック
FASはM&Aの全過程において、多岐にわたる財務に関する専門的なサービスを提供し、成功への道をサポートします。
FASの主な業務内容は以下の内容で詳しく解説しています。
M&AにおけるFASの業務内容
M&AにおけるFASの業務内容は、以下の通りです。
FASのM&A業務は、企業がM&Aプロセスを効果的に実行し、成功を実現するために、多岐にわたる財務関連のサービスを行っています。
- M&A業務
- PMI
- デューデリジェンス(DD)
- 企業価値の評価
- 不正調査
- 経営戦略・高度化
M&A業務
FASのM&A業務は、企業がM&Aプロセスを成功させるための重要なサポートを行い、企業の財務目標と戦略的目標の達成に役立ちます。
FASの主なM&A業務は以下の通りです。
- 企業価値評価:
買収対象企業の適切な価値を評価し、買収価格を推定 - 財務モデリング:
財務モデルを作成し、企業の将来の収益性とキャッシュフローの予測 - 取引構造の設計:
税務効果、法律問題、およびその他の関連要因を考慮して、最適な取引構造の設計 - 財務戦略の策定:
買収の目的、タイミング、および財務条件を明確に定義し、M&A戦略の策定
特筆すべきは、FASはM&Aのどちらの側からも信頼されており、買い手、売り手双方の立場でサポートを行うことが可能です。
デューデリジェンス(DD)
デューデリジェンスは、買収する企業の真の価値を理解し、隠れたリスクを明らかにすることです。
FASは、財務、法的、および運営デューデリジェンスの実施をサポートし、客観的な評価を提供して、買収者が適切な意思決定を行えるようにします。
FASが行うデューデリジェンスの内容は以下の通りです。
- 財務デューデリジェンス:
財務データの詳細な分析を行い、買収対象企業の財務健全性とパフォーマンスを評価 - 法的デューデリジェンス:
法律専門家と協力して、法的および契約関連の問題を調査 - 運営デューデリジェンス:
運営の効率と効果を評価し、重要な運営リスクを特定 - 市場および業界分析:
市場の動向と業界の動向を分析し、買収対象企業の市場ポジションを評価
デューデリジェンスは、M&A取引における重要なステップであり、買収者が買収対象企業の真の価値とリスクを理解するために不可欠です。FASは、このプロセスにおいて、買収者に専門知識とサポートを行います。
PMI
M&Aが成功するためには、合併後の統合プロセス、すなわちPMIが欠かせません。異なる経営文化や業務プロセスをもつ企業が一つになるための手法やプロセスをFASがサポートしてくれます。
FASが行うPMIの内容は以下の通りです。
- シナジーの評価:
取引のシナジー効果を評価し、シナジーの実現に向けたロードマップを作成する - 財務プロセスの統合:
財務および経理プロセスを統合し、新しい組織構造に適合させるサポートを行う - リスク管理:
統合プロセスに関連するリスクを評価し、リスク管理戦略を策定する - パフォーマンスのモニタリング:
統合の進捗とパフォーマンスを定期的にモニタリングし、必要に応じてサポートする
FASが行うPMI主なプロセスは、経営戦略の調和、業務フローの統合、そして企業文化の合致といった3つのステージに分かれています。
FASのPMIにおける業務は、企業がM&Aの目標とシナジーを実現するために重要であり、財務、運営、および戦略的課題に対処する専門知識が必要です。
企業価値の評価
企業価値評価は、買収対象企業の財務状況、業績、市場位置、および将来の収益性を分析するプロセスを含みます。
評価の目的は、企業の現在および将来の価値を適切に評価し、買収者と売却者が合意できる適切な価格を見つけることです。
FASが行う企業価値の評価の内容は以下の通りです。
- 財務モデリングと予測:
財務モデルを作成し、買収対象企業の将来の収益性とキャッシュフローを予測する - 市場分析:
市場と業界の動向を分析し、買収対象企業の市場ポジションを評価する - 比較会社分析 (CCA):
同業他社の財務および市場データを分析し、買収対象企業の相対的な価値を評価する - 割引キャッシュフロー分析 (DCF):
割引キャッシュフロー分析を使用して、買収対象企業の将来のキャッシュフローを評価する
企業価値評価は、M&Aプロセスにおける重要なステップであり、FASはこの分野で専門知識とサポートを行い、買収者と売却者が適切な価格で合意できるように協力してくれます。
不正調査
不正調査は、買収対象企業における不正行為や不正行為の可能性を特定し、評価するプロセスを含みます。不正調査が必要な理由は、財務報告の誤りや不正、不正な取引、規制違反などが含まれる可能性があるためです。
FASが行う不正調査の内容は以下の通りです。
- 財務報告のレビュー:
財務報告書の精度と完全性を評価し、不正や誤りがないことを確認する - 内部監査:
内部コントロールとプロセスをレビューし、不正行為の可能性を特定する - 法令遵守の確認:
法令遵守を確認し、規制違反の可能性を評価する - 取引の検証:
疑わしい取引や不正取引を特定し、評価する
不正調査は、M&Aプロセスにおけるリスクの管理と評価の重要な側面を提供し、FASはこの分野で買収者と売却者がリスクを理解し、適切に対処できるようにサポートしてくれます。
経営戦略・高度化
現代のビジネス環境は、日々進化しています。特にグローバル化やデジタル化の波に乗り遅れるわけにはいきません。
FASは、これらの変革に対応するための経営戦略やビジネスモデルの高度化をサポートや先を見据えた取り組みを通じて、企業の持続的な成長を実現します。
M&Aプロセスにおける経営戦略と高度化は、企業の成長、競争力の向上、そして財務パフォーマンスの強化に向けた戦略的アプローチを含んでいます。
FAS は、企業がM&Aを通じて戦略的目標を達成し、高度化を実現できるようにサポートしてくれます。
FASが行う経営戦略・高度化の内容は以下の通りです。
- 戦略策定:
企業がM&Aを通じて戦略的目標を明確に定義し、達成するための具体的な計画を策定する - 業務プロセスの最適化:
業務プロセスを評価し、効率化や自動化を通じて業務を高度化させる - 技術とシステムの導入:
最新の技術やシステムを導入し、企業のオペレーションを向上させる - パフォーマンスのモニタリング:
戦略的目標の達成をモニタリングし、必要に応じて戦略を調整する
経営戦略と高度化のプロセスは、企業の成長と競争力の強化にとって非常に重要です。
FASは、企業がこれらの目標を達成するために、M&Aプロセスがスムーズかつ効果的に進行することをサポートしてくれるので、相談先や依頼先としてもおすすめです。
FASとM&A仲介業者やコンサルとの違い
FASとM&A仲介業者の違い
FASとM&A仲介業者は、M&Aの領域で関わるサービスですが、役割やサービスの焦点には顕著な違いがあります。以下に、それぞれの特徴と主な違いについて詳しく解説します。
FASとM&A仲介業者主なの違い
FASは、財務面に特化してアドバイザリーサービスを提供するのに対し、M&A仲介業者は主にM&Aの取引を成立させるための仲介業務に焦点を当てています。
業務の範囲に関して、FASは財務の専門家としての視点からM&Aに関するアドバイスを行うのに対し、M&A仲介業者は実際の取引の成立をサポートする役割が中心です。
FAS
FASは「財務アドバイザリーサービス」という意味で、会計事務所や専門的なコンサルティング会社が提供する一連のサービスを指します。
主に企業の財務状況や価値に関する専門的なサービスを提供しており、多くの場合、会計事務所や大手コンサルティングファームの一部としてFAS部門が存在します。
主な業務内容は以下の通りです。
M&A仲介業者
M&Aの取引を成立させるために、売り手と買い手を結びつける役割を果たす専門家や企業を指します。
M&Aの取引をスムーズに進めるための中継役としてのサービスを提供しており、M&Aの取引が成功に至った場合、成功報酬を主な収益とすることが多いです。
主な業務内容は以下の通りです。
- 取引先の紹介:買収対象や買収希望者の紹介
- 情報提供:市場情報、業界情報、取引事例などの提供
- 価格交渉のサポート:売り手と買い手の間での価格や取引条件の交渉サポート
- 契約締結のサポート:M&A契約の締結プロセスのサポート
FASとM&Aコンサル・アドバイザリーとの違い
FASとM&Aコンサル・アドバイザリーは、両者ともに企業のM&Aに関連する業務を行う領域であり、多くの点で重なる部分があるため、混同されることが多いですが、両者の焦点やサービスの範囲には特徴的な違いがあります。
FASとM&Aコンサル・アドバイザリーとの主な違い
FASは、財務面に焦点を当てたサービスが中心であり、M&Aコンサル・アドバイザリーはM&Aプロセス全体をカバーするサービスが中心です。
またサービスの範囲に関しても、FASは多岐にわたる財務関連のアドバイスやサービスを提供するのに対し、M&Aコンサル・アドバイザリーはM&Aの戦略策定から統合後のサポートまでの一連のサービスを提供します。
M&Aコンサル・アドバイザリー
M&Aコンサル・アドバイザリーは、M&Aのプロセス全体をサポートする専門的なアドバイザリーサービスを指します。
M&Aコンサル・アドバイザリーの特徴は、M&Aのプロセス全体に関わる広範なサービスが中心に行っている点です。
主な業務内容は以下の通りです。
- M&A戦略策定:企業の成長戦略の一部としてのM&Aの方針や目的の策定
- ターゲットのスクリーニング:買収や合併の対象となる企業の選定
- 取引構造の設計:M&Aの取引方法や条件の設計
- 交渉サポート:価格交渉や契約条件の交渉のサポート
- 統合後のサポート:M&Aが完了した後の組織統合や事業統合のサポート
FASとFAとの違い
FASとFAは、財務に関連した用語であり、特にM&A(合併・買収)の文脈で頻繁に用いられます。しかし、これらは明確な役割と意味の違いを持っています。以下に、FASとFAの主な違いについて詳しく解説します。
FASとFAの主な違い
FASとFAの主な違いは、「対象とする依頼企業」と「サービスの幅」です。
対象とする依頼企業に関して、FASは主に企業を対象としたサービスを提供するのに対し、FAは主に個人を対象としたサービスを提供することが多い。
続いて、サービスの幅に関して、FASは主にM&Aや企業の再構築など、企業経営に関わる幅広いサービスを提供しますが、FAは主に資産運用や生活設計に関するサービスを提供します。
FA(Financial Advisor)とは?
FAは「財務アドバイザー」または「ファイナンシャルアドバイザー」とも呼ばれ、個人または企業の依頼企業に対して財務に関するアドバイスやサービスを提供する専門家を指します。
主な業務内容は以下の通りです。
- 投資アドバイス:依頼企業の投資目的やリスク許容度に基づいて、最適な投資戦略を提案
- 資産管理:依頼企業の資産を最適に管理・運用するサービス
- 保険・税務のアドバイス:依頼企業のライフステージや資産状況に応じた保険や税務に関するアドバイス
- 退職計画の策定:依頼企業の将来の生活設計に合わせて、退職計画や年金計画などのアドバイス