M&Aの税金に関する基礎知識【売却時にいくらかかる?】

M&Aは企業の成長戦略やビジネスの拡大を目指す際の手段ですが、そのプロセスは、単に企業間の取引だけでなく、その背後には複雑な税務の問題が存在します。

特に、売却時の税金負担は、多くの企業や株主が深く関心を持つポイントです。この記事では、M&Aの税金に関する基礎知識や売却時にかかる税金の知識、節税対策について詳しく解説します。

目次
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M&Aの税金に関する知識は必要?

M&Aのでは税金に関する知識は必要

結論から言うと、M&Aの税金に関する知識は絶対に必要です。なぜなら、M&A取引において税務面の認識は、取引の成功において非常に重要な要素となるからです。

M&Aの税金に関する知識が必要な理由

M&Aの税金に関する知識が必要な理由は、以下の3つです。

  1. 税金の理解が取引価格にも影響する
  2. 税制度の変更に柔軟に対応できる
  3. 税務の専門家とのコミュニケーションの助けになる

M&Aの取引において、取得価格や売却価格は税務面の影響が少なからずあります。過大または過小な価格で取引を進めるリスクがあるため、適切な税務知識を身につけることが必要です。

また、税制は国や地域によって異なり、時には変更されることもあります。M&Aの税金に関する知識を持っていれば、これらの変更に迅速に対応し、最適な取引戦略の策定が可能です。

加えて、M&A取引には多くの専門家が関与しており、税務の知識があれば、会計士や弁護士とのコミュニケーションがスムーズに進むため、M&Aを成功させたい方は、ある程度、M&Aの税務に関する知識も必要になります。

M&Aの税金に関する知識を知っておくメリットとは?

M&Aの税金に関する知識を知っておくことは、以下の3つのメリットがあります。

  1. 取引の最適化
  2. 将来の計画の策定
  3. 信用力の向上

M&Aの税金に関する知識を知ることで得られるメリットには、取引コストを削減したり、税務リスクを最小化することに加え、M&A後の経営計画や資本政策、投資家や関連企業との関係構築などで大きなアドバンテージになることです。

適切な税務知識を持っていると、企業の信用度の向上、適切な計画を策定などの戦略的メリットが多くあります。M&Aの初心者の方は、以上のメリットを意識して、税務面の知識を身につけることをおすすめします。

M&Aと税金の基礎知識

M&Aと税金の基礎知識

M&Aは、企業が成長し、新しい市場に進出するための重要な戦略ですが、M&Aは税法に影響を受けるため、税務の基本的な知識を持っておくことが必要があります。

M&Aの税金を学ぶ場合は、個人と法人で分けて考えると分かりやすいです。

  • 個人M&Aの税金
  • 法人M&Aの税金

個人M&Aの税金

M&Aの際、取引当事者が個人である場合、その取引から生じる所得にどのような税金がかかるのかを理解することは非常に重要です。

個人M&Aの税金はいくら?

実際のM&Aにおいて、税金は売却代金、取得コスト、およびその他の関連費用に依存します。日本で個人M&Aを行った場合、税金の計算は以下の式に基づいています。

税金の計算は「株式譲渡所得×20.315%」で求めることができます。税金の内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、個人住民税5%です。

個人がM&Aを行った場合

仮に売却代金が10億円で、取得費が5%、手数料が3%だった場合を考えてみます。この場合、所得税は約1億4,090万円、住民税は4,600万円になります。

上記の内容を実際に計算すると以下の通りです。

  • 手数料の計算:10億円×0.03=3000万円
  • 取得費の計算:10億円×0.05=5000万円
  • 手数料と取得費を差し引いた売却代金の計算:10億円-3000万円-5000万円=9億2000万円
  • 株式譲渡所得の計算(売却代金から手数料と取得費を差し引いた額):9億2000万円
  • 所得税の計算:9億2000万円×0.15=1億3800万円
  • 復興特別所得税の計算:9億2000万円×0.00315=2900万円
  • 個人住民税の計算:9億2000万円×0.05=4600万円

これらの税額を合計すると、「税金の総額は約1億8400万円」になります。

これは前に述べた具体的な例とは異なる結果ですが、「取得費や手数料の割合」、また「は他の可能な費用」などによって税金の額が異なる場合があります。

また税法上、個人の所得は10のカテゴリーに分けられます。これらの所得は大きく2つ、総合課税と分離課税の仕組みに分けられます。

総合課税の所得

  • 給与所得
  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 配当所得
  • 譲渡所得(例:ゴルフ会員権売却)
  • 一時所得
  • 雑所得

総合課税は名の通り、上記の所得を合計して、一定の控除を差し引いた上で税率が適用されます。

分離課税の所得

  • 利子所得
  • 退職所得
  • 譲渡所得(例:株式売却、土地・建物売却)
  • 山林所得

分離課税の所得は、それぞれ独立して固定の税率で課税されます。具体的には、株式の売却による利益は分離課税の下で課税されるため、他の所得と合算されることはありません。

法人M&Aの税金

企業間のM&Aでは、取引から生じる利益に対して法人税が課されます。個人の税制とは異なり、法人税は利益額に基づいて一定の税率で課されるシンプルな仕組みとなっています。

法人税の種類は以下の通りです。

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税

これらの税金は合計され、最終的な税金の額を構成します。この合計税率を「実効税率」と呼びます。例えば、2022年時点の実効税率は約31%となっていますが、会社の規模や所在地によっては異なる場合があります。

法人M&Aの税金はいくら?

法人M&Aの税金に関しては、具体的な税金額はM&Aの種類や交渉内容、さらには企業の財務状況などによって大きく異なります。

法人でM&Aを行った場合

事業譲渡の場合:譲渡される資産や負債の価値に基づいて税金が計算される

例えば、事業譲渡金額が2億円で譲渡される資産や負債の簿価が1億円の場合、事業売却益として1億円が計上されます。

事業売却益(1億円)=事業譲渡金額(2億円)-譲渡される資産や負債の簿価(1億円)

法人税は通常、法人実効税率を事業売却益に掛けて計算されます。今回の場合、法人実効税率が約30%と仮定すると、税金は1億円の30%、つまり3,000万円になります​。

法人税(3,000万円)=事業売却益(1億円)×法人実効税率(30%)

住民税と事業税は通常、法人税の基準に基づいて計算されますが、住民税と事業税の税率はそれぞれ異なります。仮に、住民税の税率が10%、事業税の税率が10%と仮定すると、以下のような計算になります。

  • 住民税(300万円)=法人税の基準(3,000万円)×住民税率(10%)
  • 事業税(300万円)=法人税の基準(3,000万円)×事業税率(10%)

これらの税金を合計すると、事業譲渡に関連する税金の総額は「3,600万円」となります。

※税率は地域や企業の状況によって異なる可能性があるため、正確な税金の計算には専門家に相談するのがおすすめ

法人M&Aの税務に関しては専門の税理士や公認会計士に相談することをおすすめします。M&Aの税務に関する専門家は、企業の財務状況やM&Aの詳細に基づいて、より正確な税金額を計算することができます。

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M&Aの売却時にかかる税金

M&Aの売却時にかかる税金

M&Aの過程では、特に売却側となる企業や株主が直面する税金の負担が大きな関心事です。ここでは、売却時にかかるM&Aの税金を手法ごとに解説します。

売却時に関わる税金の手法は以下の3種類です。

  • 株式譲渡:企業や個人が株式を譲渡する際にかかる税金で、その税率は一般的に20.315%となっている
  • 事業譲渡:企業が事業そのものを譲渡する場合に課される税金で、これには譲渡益に対する税率が適用される
  • 組織再編:特定の条件下で非課税扱いが適用されることもあるが、条件を満たさない場合は課税される

売却時にかかる税金に関しては、以下の内容でも詳しく解説しています。

M&Aの株式譲渡と税金

M&Aの株式譲渡と税金

株式譲渡とは、一つの企業が別の企業に対して過半数の株式を売却するM&Aの手法を指します。

具体的には、過半数の議決権を持つことで、取締役の選任・解任を制御でき、経営権を取得することが可能となります。ただし、譲渡した株式が過半数に満たない場合は「資本提携」と呼びます。

株式譲渡に関連する税金

  • 個人の場合:譲渡所得に対して所得税が15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%が課せられ、合計税率は20.315%
  • 法人の場合:譲渡益と他の利益・損失を通算し、法人税を適用される

個人の場合

オーナー企業や同族企業の場合、株主は通常、経営者やその親族などの個人となります。

個人の場合、譲渡所得に対して税金が課されます。ここでの譲渡所得は、売却金額から取得価格と関連経費を差し引いた額です。この所得は申告分離課税となり、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の税率が一定で適用されます。

法人の場合

法人が株式を譲渡する場合、譲渡益と他の活動からの利益や損失が通算され、そのトータルの利益に対して税金がかかります。

  • 法人税:原則23.2%、資本金の少ない会社や公益法人などは異なる
  • 地方法人税:10.3%
  • 法人住民税:額は自治体や資本金により異なる(例:東京都23区内「均等割は7万円〜380万円」「法人税割は7%または10.4%」)
  • 法人事業税:資本金や業種に応じて変動。資本割、所得割、付加価値割などが考慮される
  • 特別法人事業税額は自治体により異なる

株式譲渡はM&Aの一つの手法であり、それに関連する税金は、株主が個人であるか、法人であるかによって大きく変わります。適切な計画と知識を持つことで、税負担を最適化することが可能です。

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M&Aの事業譲渡と税金

M&Aの事業譲渡と税金

事業譲渡は、一社が自社の事業を他の会社に売却する行為を指し、税務上の取り扱いが特有です。

ここでは、事業譲渡の概要とそれに伴う税金について詳しく解説します。

そもそも事業譲渡とは、店舗・工場・設備・在庫・人材など、事業運営に必要な資産や権利を他の企業に移転することです。

ただの在庫売却ではなく、事業の存続や継続を目的とした取引です。譲渡するのは事業資産のみで、株式の譲渡は含まれません。よって、譲渡企業の株主構成は変わらず、子会社化も生じません。事業譲渡には、すべての事業を移転する「全部譲渡」と一部の事業のみ移転する「一部譲渡」が存在します。

税金の種類と計算方法

事業譲渡時の税金は、売却した資産の売却益に関係しています。

主な税金の種類と計算方法は以下の通りです。

  • 個人:
    所得税・住民税・復興特別所得税
    計算方法:譲渡資産の種類による
  • 法人:
    法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税
    計算方法:(事業資産の譲渡益と他の益金・損金の合計)×実効税率
  • 譲受側:
    消費税
    計算方法:課税資産の譲受価額×10%

特に、譲渡側が事業資産の中に消費税の課税資産を含む場合、譲受側には消費税の納付の義務が発生します。

譲渡タイプと税金の適用

全部譲渡では、売却益に法人税や地方法人税などが課税されます。また、消費税も適用され、事業の売却代金から非課税資産(土地等)を除いた金額に対する税金が求められます。

一部譲渡は一部の事業のみを売却する場合でも、全部譲渡と同様の税金が課税されます。但し、事業を部分的に譲渡した後、残りの事業を継承する場合には、相続税が課税される点や、業種変更に伴う税務評価の変動が考慮される必要があります。

注意点

事業譲渡における税務は複雑です。特に、事業譲渡代金を役員報酬として受け取る場合や、事業の一部譲渡による業種の変更が生じる場合には、税務署の審査が厳格になる可能性があるため、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

事業を譲渡する際は、上記の税務や法的な側面だけでなく、事業の将来性や従業員の扱いなど、多岐にわたる要因を検討する必要があります。正確な情報と適切な戦略が、スムーズな事業の移転をサポートします。

M&Aの組織再編と税金

M&Aの組織再編と税金

組織再編とは、企業が行うさまざまな再編手法の総称です。、以下の内容が含まれます。

  • 合併
  • 会社分割
  • 株式交換
  • 株式移転
  • 株式交付

以上の手法は、会社法で定められており、企業の効率化、コスト削減、資本力の強化や競争力の強化などの目的で実施されます。特に、グループ企業間での取引が一般的ですが、グループ外の企業同士での組織再編も十分に可能です。

組織再編における税制は非常に特徴的です。組織再編の際、資産の譲渡が行われると、その譲渡益に対して税金が課される可能性があります。しかし、これでは組織再編を実施する際のハードルが高くなってしまいます。

そこで、政府は「適格要件」という一定の条件を設け、これを満たす組織再編に対しては特別な税制が適用されるようにしています。具体的には、適格要件を満たす組織再編では、資産を簿価で譲渡することができ、その結果、譲渡益が発生しないため税金が課されることはありません。

一方、適格要件を満たさない組織再編の場合、資産は時価で譲渡され、その差額に対して税金が課されます。これは、通常の株式譲渡や事業譲渡と同様の税制となります。

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M&Aの節税対策

M&Aの節税対策

M&Aを行う際は、税金の対策をしっかりと行うことで、節税効果を最大化することができます。

具体的な節税対策は、以下の3つです。

  1. 退職金を活用した株式譲渡
  2. 第三者割当増資を活用する方法
  3. 買収ニーズが高い資産の選択的売却

退職金を活用した株式譲渡

譲渡企業の株主が社長や役員である場合、譲渡の対価を退職金として受け取ることで節税効果が期待できます。

メリットとしては、退職金の税率は一般的な所得税よりも優遇されているため、20.315%の株式譲渡税よりも低い税率となることがあります。

また、譲受企業のメリットには、退職金は損金として計上できるため、税負担を軽減することが可能です。

ただし、注意点としては、退職金は累進課税となっており、金額が増加すると税率も高くなります。そのため、適切な金額を計算することが重要です。

第三者割当増資を活用する方法

新株を特定の者に発行し、資本を増強する手法を用いることで、既存の株主の株式譲渡を避けることができます。

メリットとしては、譲受企業が新株を取得し、譲渡企業の経営権を取得することが可能です。この方法では、譲渡企業の株主には税金がかかりません。

一方注意点としては、譲渡企業の株主は、株式を実際に譲渡していないため、譲渡益を得ることはできません。

買収ニーズが高い資産の選択的売却

譲渡企業が所有する資産の中で、譲受企業のニーズが高いものだけを選択的に売却することで節税効果を狙います。

メリットとしては、ニーズの低い資産を売却しないことで、譲渡益を抑えることができ、税金の軽減が期待できます。

実践例としては、事業譲渡の際、特定の資産だけを譲渡することや、株式譲渡前に資産の価値を下げる処分を行うことで節税を実現することが可能です。

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