これからM&Aを学ぶ方にとって、「そもそもM&Aの何を学べば良いのか?」「M&Aは学ぶ必要はあるのか?」といった疑問を持っている方もいると思います。
実際にM&Aの基礎知識を学ぶことで、ビジネス知識や戦略を考える力を身につけることができます。少しでもM&Aに興味がある方は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。
初心者の基礎知識①:M&A業界の実態
そもそもM&A(Mergers and Acquisitions)とは、企業が成長や競争力強化を目指すために、他の企業を買収(Acquisitions)したり、合併(Mergers)したりすることを指します。
M&Aにより、企業は新規事業への参入や短期間での事業成長、業界内でのシェア拡大などが可能となります。
ここでは、「M&A業界の特徴」や「M&A業界の今後の動向」について解説します。
M&A業界の特徴
近年、国内外を問わず、M&Aの動きが活発化しており、M&A業界は多くの注目を集めています。
特に、M&Aは専門性高く、変動の激しい市場環境など、他とは違う独特な業界です。
M&A業界の特徴は、以下の通りです。
- 専門的な知識とスキルが求められる
- 常に変わる市場環境との対応が必要
- グローバルな視点が不可欠
M&A業界は、企業経営や法律、会計などの専門知識が必要とされ、専門家たちが高度なスキルを駆使してサポートを行っています。
また、経済の変動や政治的な変化、業界内の動向など、常に変わる市場環境との対応が求められ、柔軟な思考や迅速な判断が不可欠です。さらに、国境を越えたM&Aが増える中、グローバルな視点での対応や異文化理解も重要となっています。
M&A業界の今後の動向
今後のM&Aに関しては、以下の2つが考えられます。
- 事業承継の増加
- 小規模のM&Aの増加
M&A業界のは近年、後継者問題を背景に中小企業M&Aのニーズが急速に拡大しています。
また、中小企業M&A業界では、新規参入のM&A仲介会社が急増しています。これらの動向から、今後もM&A市場は活発化し続けると予想されます。
事業承継の増加
今後、M&Aの市場はますます拡大します。なぜなら、「後継者不足」「人材不足」に悩む企業が増加すると予想できるためです。
特に後継者不足は深刻であり、多くの企業が後継者不在問題を抱えています。
実際、後継者にふさわしい人材が見つかっても、経営者として育成するまでに5~10年要するのが実状です。その間に市場環境に変化が生じれば、企業価値が低下してしまうかもしれません。
以上のような理由から、事業承継のためのM&A件数は増加し、全体的な市場規模の拡大につながると考えられます。
小規模M&A件数の増加
また、中小企業を中心とした小規模M&A件数も増加傾向にあります。
海外では、最初からM&Aでの売却を目的に経営するケースも少なくありません。日本ではまだそれほど一般的ではないものの、今後は日本でも小規模M&Aがさらに活用される可能性が非常に高いとの予測です。
起業家が会社設立の手間を省くために、小規模会社を買収する場合もあります。起業家はコストを削減しつつ自分の会社を持てるようになるため、スタートアップとして有効な手段といえるでしょう。
初心者の基礎知識②:M&Aの流れ
M&Aの初心者にとってM&Aの流れを知ることは非常に重要です。M&Aのプロセスは、事前準備から成立と引継ぎまで多くのステップを含みます。
以下の内容では、M&Aの基本的な流れと重要なポイントを解説します。
M&Aの簡単な流れは以下の通りです。
- 事前準備:自社の財務状況、戦略的目的、およびM&Aによって達成したい目標を明確にする
- 専門家に相談:M&Aの専門家、法律家、財務アドバイザーなどに相談し、プロセスの理解と戦略の策定を行う
- 買い手・売り手候補の選定:適切な買い手または売り手の候補を選定し、初期の接触を図る
- 条件交渉:価格、支払い条件、保証・補償などの条件を交渉する
- M&A成立と引継ぎ:合意に達した後、契約を締結し、必要な法的手続きを完了させて、事業の引継ぎを行う
以上のM&Aの簡単な流れを踏まえた上で、M&Aの初心者が覚えておくべきポイントは、以下の通りです。
- 明確な目的と準備:M&Aの目的を明確にし、十分な準備を行うことが重要
- 専門家との連携:M&Aのプロセスは複雑であり、専門家のアドバイスが必要不可欠
- 透明なコミュニケーション:交渉の過程で情報を透明に共有し、信頼関係を築くことが重要
M&Aの流れは、事前準備と専門家に相談することで始まり、適切な買い手・売り手候補の選定、条件交渉を通じて、最終的にM&Aの成立と事業の引継ぎまで至ります。
このプロセスを理解し、各ステップごとの「リスク」や「コスト」の2点を把握することができれば、M&Aの成功に大きく近づくことができます。
M&Aを進める際は、必ず事前準備をしておきましょう。
またM&Aの進め方についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
初心者の基礎知識③:M&Aの種類
M&Aは、企業が成長、拡大、または効率化を目指す際に選択する戦略の一つで、主に三つの種類があります。
以下の3種類は異なる目的とプロセスを持ち、企業が選択するには状況や目標に応じて適切なタイプを理解することが重要です。
- 買収:一方の企業が他の企業の株式や資産を購入し、所有およびコントロールを取得するプロセス
- 合併:合併は二つ以上の企業が同等の立場で統合し、新しい企業を作成するプロセス
- 提携:提携は企業間での契約に基づいた協力関係であり、所有権の移転は伴わない
買収の目的は、企業の成長戦略や市場拡大、技術や資源の取得です。
- 株式取得・資本参加:「株式譲渡」「株式交換」「株式移転」「第三者割当増資」など
- 事業譲渡・資産買収:「事業譲渡」「吸収分割」「新設分割」など
合併の目的は、合併は効率化、規模の拡大、市場力の強化です。
- 吸収合併:一つの組織が他の複数の組織を「吸収」し、その組織の資産、負債、権利、義務などを引き継ぐこと
- 新設合併:複数の既存の組織が一つにまとまり、全く新しい組織を作ること
提携の目的は、技術や市場アクセスの共有、新しいビジネスの機会を創出することです。
- 資本提携:企業が互いに株式を交換、一方が他方の株式を取得することで、経済的な結びつきを持つこと
- 業務提携:二つ以上の企業が特定の業務において協力し合うこと
M&Aの種類を通して、初心者が覚えておくべきポイントは、「各M&Aの種類がどのような目的で行われるのか?」を理解しておくことです。
また、M&Aには多くのリスクが伴います。合併や買収の対象となる企業の財務状況、法律問題、文化の違いなどを評価し、リスクを最小化する準備も必要になります。
M&Aの種類についての基本的な知識は、「企業の戦略的目標」と「どのように関連しているのかを理解する上」で必要不可欠な要素です。
それぞれのM&Aの種類がどのような目的で、どのような状況で適切であるのかを知り、リスクを適切に評価し、準備を整えることで、M&Aの成功に向けた重要な第一歩を踏み出すことができます。
M&Aの種類についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
初心者の基礎知識④:M&Aの価格の決まり方
M&Aの価格設定は非常に重要なプロセスであり、企業の真の価値を正確に反映することが求められます。価格設定のプロセスは複雑で、多くの要因が関係しています。ここではM&Aの価格の決まり方に焦点を当てて解説します。
M&Aの価格は、買い手と売り手の交渉で決まります。
M&Aの価格の決まり方配下の通りです。
M&Aの価格の決まり方は以下の3つを基準に決まります。
- 売り手と買い手の視点:実際のM&Aでは、売り手と買い手の交渉次第で価格が決まる
- 適正価格の算定:「適正価格 (≒企業価値)」を基準に交渉を進める
- 価格算定方法:「コストアプローチ」「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」の3種類ある
M&Aの価格の決まり方において初心者が覚えておくべきポイントは、「適正価格の算定」と「価格算定方法」の2点です。
M&Aの「適正価格の算定」と「価格算定方法」は非常に複雑で多くの要因が影響するため、専門的知識や経験が求められます。そのため、初心者が学ぶにはハードルが高いかもしれませんが、理解しておくことで、よりM&Aについて知ることができます。
実際に「適正価格の算定」と「価格算定方法」について詳しく知りたい方は、専門家のアドバイスを受けることを強くおすすめします。
また、可能であれば専門家に企業価値評価を依頼し、交渉プロセスをサポートしてもらうことも検討すると良いでしょう。
M&Aの価格設定は、売り手と買い手双方にとって公正で利益をもたらす取引を確実にするためには不可欠です。
専門知識を持つアドバイザーや専門家と連携し、適切な価格算定方法を選択し、正確な企業価値評価を行うことで、成功する可能性を高めることができます。
M&Aの交渉についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
初心者の基礎知識⑤:M&Aの税金問題
M&Aにかかる金額は、買収費用や専門家への成功報酬だけではなく、税金もかかります。
M&Aの税金問題は非常に複雑であり、売り手と買い手双方に影響を与える重要な要素です。
以下の内容では、税金問題に関する基本的な知識を紹介しています。
通常、売り手は譲渡利益に対する税金を支払う必要があります。これは、事業の売却価格と事業の帳簿価格(または調整済みのコストベース)との差額に対する税金です。
例えば、事業の売却価格が1億円で、帳簿価格が5000万円の場合、譲渡利益は5000万円になります。
日本の法律では、譲渡利益に対する税率は通常「30.63%(法人税29.74% + 住民税0.897%)」ですが、さらに復興特別税が加算されるため、実際の税率は数パーセント高くなる可能性があります。
買い手は、購入した事業に関連する将来の収益に対して税金を支払います。
買い手の税金は、事業の収益と費用に基づいて計算され、税法と買い手の税務状況によって異なります。
例えば、1億円で会社を買収し、その後の1年間で事業から2,000万円の利益を上げた場合、この利益に対して税金を支払う必要があります。
日本では、法人税の基本的な税率は約30.63%(法人税29.74% + 住民税0.897%)であり、この場合の税金額は約613万円(2,000万円 × 30.63%)となります。ただし、この税率は企業の規模や地域により異なる可能性があります。
また、買収価格(1億円)と事業の帳簿価格との間に差額がある場合、減価償却の計算に影響が出る可能性があり、これが税負担に影響を与える可能性があります。
※買い手は購入した事業の将来の収益に対して税金を支払う必要がありますが、税法や企業の税務状況、利益の計算方法など多くの要因によって税金の額は大きく変動します。
M&Aの税金問題を通して、初心者が覚えておくべきポイントは、「M&A取引は税務の観点から非常に複雑なため、必ず税務関係の専門家に相談すること」と「簡単な税務に関する内容を理解し、可能な限り最適化すること」の2点です。
M&Aの税金問題は専門知識を必要とするため、税務専門家や法律アドバイザーと連携するのがおすすめです。これにより、税務リスクを適切に管理し、税務コンプライアンスを確保し、取引の税務効果を最適化することが可能となります。
M&Aの税金に関してもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
M&Aを学ぶべき理由とは?
結論から言うと、経営者や事業責任者は、M&Aの知識を学ぶべきです。
営者や事業責任者の初心者がM&Aを学ぶべき理由は以下の3つです。
- 事業拡大・成長戦略
- リスク管理・多角化
- 経営資源の最適活用
事業拡大・成長戦略
M&Aは企業の成長戦略の一つであり、新たな市場への進出や競争力の強化、事業ポートフォリオの最適化などを実現する手段となります。M&Aを理解することで、自社のビジネスを拡大し、競争優位性を確保するための戦略を立てることが可能になります。
リスク管理・多角化
M&Aは自社の経営資源(人材、技術、資金等)を最適に活用するための手段です。他社の強みや資源を取り込むことで、自社の弱点を補い、ビジネスパフォーマンスを向上させることができます。
経営資源の最適活用
M&Aは自社の経営資源(人材、技術、資金等)を最適に活用するための手段です。他社の強みや資源を取り込むことで、自社の弱点を補い、ビジネスパフォーマンスを向上させることができます。