M&Aは、企業が成長する上で重要な戦略の一つですが、M&Aを成功させるためには適切な進め方と戦略が必要になります。
この記事では、M&Aの基本的な進め方と注意点について詳しく解説していくので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
M&Aの基本的な進め方
M&Aを進める上で、まずは基本的な内容を押さえておきましょう。
ここでは、M&Aの全体像と目的、相談先などを解説します。
- M&Aの進め方の全体像
- M&Aの目的
- M&Aの相談先
M&Aの進め方の全体像
M&Aは大まかに分けて、以下の5つのステップで進行します。
- 事前準備:自分がM&Aで何を実現したいのかを明確にし、M&Aの目標を定める
- 専門家に相談:仲介業者が買い手・売り手の候補を探してくれる
- 買い手・売り手候補の選定:売り手の判断で買い手候補を最良の1社に絞り込む
- 条件交渉:価格などのM&Aの条件について交渉する
- M&A成立と引継ぎ:合意すればM&Aが成立し、事業の引継ぎを行う
M&Aを進める際は、必ず事前準備をしておきましょう。事前準備の有無でM&Aの成功率が変わってくるので、準備した上で専門家に相談することをおすすめします。
M&Aの基本的な進め方は買い手と売り手で異なります。
気になる方は、以降の内容で買い手と売り手のM&Aの進め方を解説しているのでチェックしてみてください。
- 買い手側のM&Aの進め方
- 売り手側のM&Aの進め方
M&Aの目的
買い手と売り手の目的は以下の通りです。
- 経営戦略に合致した会社や事業を買収する
- 投資によって会社の価値の増大させる
- 事業承継
- 資本政策
買い手と売り手では、それぞれ目的が異なります。目的に応じてM&Aの戦略も変わってくるので、M&Aを検討する際は、事前に目的を明確にしておきましょう。
M&Aの相談先
M&Aの相談先は以下の通りです。
- M&A仲介業者:M&Aの相手探しや契約など
- 士業:公認会計士や税理士など
- 金融機関:銀行や証券会社など
- 公的機関:商工会議所や各県の事業承継・引継ぎ支援センターなど
特に、初めてM&Aを行う方や経営者の方は、M&Aの仲介業者に相談することをおすすめします。
仲介業者は、M&Aに関する知識や経験が豊富にあるために、様々な相談に対して柔軟に対応することが可能です。
M&Aの相談先に関してもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
買い手側のM&Aの進め方
ここでは、買い手側のM&Aの進め方について解説していきます。
買い手側のM&Aの基本的な進め方は以下の通りです。
- M&A専門家に相談する
- 秘密保持契約の締結する
- ノンネームシートを見て検討する
- M&A専門家と契約する
- 売り手との交渉・トップ面談を行う
- 意向表明書を提示する
- 基本合意を締結する
- 買収監査(デューデリジェンス)を行う
- 最終契約・クロージングを行う
M&A専門家に相談する
事前にM&Aの計画を立てている方は、M&Aの専門家に相談をすることから始めましょう。
自社のビジネスモデルや買収ニーズをヒアリングしてもらい、最適なM&A計画の提案を受けることができます。
専門家に関しては、「M&Aの仲介業」または「士業(公認会計士や税理士)」に相談することをおすすめします。
秘密保持契約の締結する
M&Aの専門家を選別したら、相談する前に専門家との秘密保持契約の締結を行います。秘密保持契約を締結しておかないと、秘密情報の漏洩リスクがあります。
自社のリスクを避ける上でも必ず秘密保持契約を結んでおきましょう。
ノンネームシートを見て検討する
秘密保持契約を締結したら、M&A専門家からノンネームシートを閲覧します。
ノンネームシートは、売り手の大まかな概要やビジネスモデル、財務内容などが掲載されている資料のことです。ノンネームシートを閲覧し、交渉相手を選別しましょう。
ノンネームシートには以下のような情報が乗っています。
- 業種(業界)
- 地域
- 従業員数
- 売上高
- 営業利益
- 譲渡理由
- 譲渡スキーム
- 譲渡希望時期
M&A専門家と契約する
専門家への相談やノンネームシートの閲覧を経て、交渉に移りたい売り手を選別したら、M&Aに係るアドバイザリー契約をM&A専門家と締結します。
M&Aのアドバイザリー契約の具体的な内容は以下の通りです。
- 業務範囲:具体的にどのような業務を行うかを決める
- 報酬の取り決め:売り手または買い手が仲介会社へ支払う報酬についての内容も記載される
- 業務の費用の負担:契約報酬とは別に、M&AアドバイザーがM&Aの過程において発生した費用の負担について
- 資料の提供:M&Aアドバイザーが必要とする資料を提供する
- 契約企業の秘密保持:M&Aアドバイザーとの間で交換される情報の秘密保持について契約書に記載する
M&Aアドバイザリーについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
売り手との交渉・トップ面談を行う
交渉の初動としては、M&A専門家を通しての交渉を行います。
交渉の中でもより強く興味のある売り手とは、お互いをより深く理解するためにトップ面談を実施します。
トップ面談もっと詳しく知りたい方は、以下の記事でも解説しているのでチェックしてみてください。
意向表明書を提示する
トップ面談を実施し、大まかな取引価格と条件面が折り合ってきた場合、買収の意向を示すために意向表明書を売り手に提示します。
M&Aにおける意向表明書は、買い手が売り手に対してM&Aを行う意思を伝える書面のことです。
- 企業概要:買い手企業の企業概要の記載
- M&Aの目的:M&Aを望んでいる意志表明や理由、目的などの記載
- M&Aスキーム:株式譲渡や事業譲渡などM&Aのスキームの希望を記載
- 買収価格:想定している希望の買収金額を記載
意向表明書は必須ではありませんが、買い手の意向を書面にして売り手に伝えることで、スムーズなM&Aの成約につながります。
基本合意を締結する
上記の「意向表明書の提示」後に、基本的な合意事項を盛り込んだ基本合意書を売り手と結びます。
M&Aにおける基本合意書とは、買い手企業と売り手企業が互いに「M&Aを進めること」について合意したら、締結する契約書のことです。
基本合意書の主な目的は以下の通りです。
- 重要論点の合意
- M&Aの成立に向けた心理的拘束力の確立
- スケジュールの明確化
- 買収価格の上限設定
- 独占交渉権の設定(公表による買い手の交渉力強化)
基本合意書には、取引条件面での法的拘束力はありませんが、一部の項目だけに法的拘束力を持たせることもあります。具体的には、デューデリジェンス(買収監査)の実施や独占交渉、秘密保持義務などについて法的義務を認めます。
ただし、基本合意書で設定される具体的な買収価格については、デューデリジェンスの後に変わる可能性があるので注意が必要です。
デューデリジェンス(買収監査)を行う
基本合意締結後、買い手によるデューデリジェンス(買収監査)を実施します。
M&Aにおけるデューデリジェンスは、買い手企業が売り手企業を調査する一連のプロセスのことです。
デューデリジェンスを行う目的は、以下の通りです。
- リスクの特定と評価:財務リスク、運用リスク、法的リスクなどの潜在的な問題を把握し、リスクへの対応を行う
- 企業価値の評価:企業の財務状況、市場ポジション、競争力、将来の成長性などを調査し、取引価格を評価する
- ビジネスチャンスの発見:新しい市場機会、シナジーを生み出すことができるか判断する
最終契約・クロージングを行う
デューデリジェンス後、M&Aの最終契約を行います。
最終契約後、クロージングを終えるとM&Aの取引は完了となります。
クロージングとは、M&Aの最終契約の締結後、最終契約書に基づいて取引を実行することです。
クロージングの具体的な手続きは以下の通りです。
- 譲渡代金の支払い:買い手が売り手に対して譲渡代金の支払い
- 引き渡しの手続き:売り手が買い手に対して株券や会社代表印などの重要物品の引き渡し
- 経営権の移転:売り手側の企業から買い手側の企業への経営権の移転
買い手側のM&Aの事前準備と条件
M&Aの買い手側の事前準備と条件は以下の通りです。
- M&Aの買い手側の事前準備
- M&Aの買い手側の条件
M&Aの買い手側の事前準備
買い手側の事前準備は会社の状況に異なりますが、具体的には以下の内容が挙げられます。
- 利害関係者の把握・調整:M&Aに関わる全ての人々の意見や反応を理解し、それに対応するための計画を立てる
- 議決権の確保:株主総会や取締役会での投票における影響力を確保する
- 売却価格の検討:買収対象企業の価値(財務データ、市場状況、業界動向など)を評価し、適切な買収価格を決定する
- 協力者の選定:M&Aは複雑なプロセスであり、専門的な知識と経験が必要なため、専門家に相談する
買い手側は、必ず事前準備をしておきましょう。
M&Aの買い手側の条件
M&Aの買い手側の条件は以下の通りです。
- 買収対象の選定:専門業者を通して提示されるノンネームシートや独自の調査をもとにして有望な買収対象を探す
- 現状分析:自社の現状を分析し、買収後の組織のあり方や成長戦略に関するビジョンを明確化する
- M&A戦略の検討:交渉相手の条件や買収スキームをある程度絞り込みをする
買い手側は、以上の条件を意識した上で、売り手側の企業を選びましょう。
売り手側のM&Aの進め方
ここでは、買い手側のM&Aの進め方について解説していきます。
売り手側のM&Aの進め方は以下の通りです。
- 検討と事前準備をする
- マッチングと交渉を行う
- 最終契約をする
- クロージングを行う
検討と事前準備をする
売り手側のM&Aの進め方で「検討・事前準備」で行う内容は以下の通りです。
- 自社の分析
- M&Aの初期的な相談
- アドバイザリー契約
まず、自社がM&Aの対象となることを検討し、その上で事前準備を行いましょう。
最初に、自社の事業戦略や財務状況、市場環境などを評価し、M&Aが自社にとって最善の選択であるかどうかの分析必要です。また、自社の評価額を算出し、買収価格の目安を設定しておきましょう。
さらに、自社の強みや弱みを明確にし、これらが買い手にとってどのような価値を持つかを知っておくことで、交渉の時に役に立ちます。
自社の分析後、専門家に企業売却に関する相談を行いましょう。また、M&Aを進めていく上で、自社に合ったアドバイザリー契約を結ぶことで、円滑にM&Aを進めることができます。
マッチングと交渉を行う
売り手側のM&Aの進め方で「マッチングと交渉」で行う内容は以下の通りです。
- 候補企業の選定
- 経営者同士のトップ面談
- 条件交渉
- 基本条件の合意
- デューディリジェンス
次に、買い手候補とのマッチングと交渉を行います。
この段階では、買い手候補との間で初期的な意向合意書を締結する場合もあります。
意向合意書は、買い手候補が自社に対してM&Aを行う意思があることを示すもので、具体的な取引条件やスケジュールなどが記載されている書類です。
意向合意書の締結後、順調ならば、経営者同士のトップ面談〜デューディリジェンスまでスムーズに進めることができます。
最終契約をする
買い手候補との交渉が進み、最終的な取引条件が決まったら、最終契約書を締結します。
最終契約書には、取引価格や支払い方法、取引後の経営体制など、具体的な取引内容が詳細に記載されます。
クロージングを行う
最終契約書が締結され、クロージングを終了したら、取引は完了です。
実際にクロージング後にも必要な作業がいくつかあります。
クロージング後に行う内容は以下の通りです。
- ディスクロージャー
- 経営統合(PMI)
- PMI後の事業展開
売り手側のM&Aの事前準備と条件
M&Aの売り手側の事前準備と条件は以下の通りです。
- M&Aの売り手側の事前準備
- M&Aの売り手側の条件
M&Aの売り手側の事前準備
売り手側の事前準備も会社の状況に異なりますが、具体的には以下の内容が挙げられます。
- 買収・売却後の具体的なビジョンを持っておく
- 交渉時に必要なアピールポイント(収益力、技術力、財政基盤など)と起こりうるリスクを整理する
- 「過去数年分の財務諸表」や「取引の契約書」などの資料を準備する
売り手側は、なるべく過去のデータや必要書類を多く用意しておくことで、買い手側へ多くの情報を提供することができます。
M&Aの売り手側の条件
M&Aの売り手側の条件は以下の通りです。
- 売り手側の目的:不採算事業の切り離しや第三者への事業承継など
- 譲渡対価:譲渡対価の金額を把握しておく
- 譲渡後の待遇:譲渡後の役員・従業員の待遇を考慮する
売り手側は、以上条件を意識した上で、買い手側の企業と交渉しましょう。
M&Aの進め方で押さえておくべき注意点
M&Aの進め方で抑えておくべき注意点は以下の3つです。
- 明確な目標を設定する
- 適切なターゲットを選定する
- デューディリジェンス(事前調査)を行う
明確な目標を設定する
M&Aの進め方で抑えておくべき注意点の1つ目は、「明確な目標を設定する」ことです。
M&Aは高額な投資を伴うため、明確な目標を設定し、その目標が達成可能であることを確認しましょう。
目標は、買い手と売り手で異なりますが、新規市場への進出、競争力の強化、コスト削減など、具体的かつ測定可能な目標設定を意識することが重要です。
適切なターゲットを選定する
M&Aの進め方で抑えておくべき注意点の2つ目は、「適切なターゲットを選定する」ことです。
M&Aの成功は、ターゲット企業の選定に大きく依存します。
そのため、選定先の企業は「自社のビジネス戦略と整合性があるか」「財務状況、市場ポジション、組織文化などが適合しているか」を見極めることが重要です。
デューディリジェンス(事前調査)を行う
M&Aの進め方で抑えておくべき注意点の3つ目は、「デューディリジェンス(事前調査)を行う」ことです。
M&Aでは、最終契約前に「買収対象企業の財務状況」「業績」「法的問題」などを詳細に調査するデューディリジェンスが必要になります。
デューディリジェンスを行うことによって、隠れたリスクを発見し、適切な価格を決定することができるので、最終契約前に必ず調査しましょう。