事業概要
和洋風レストラン1店舗経営。百貨店内に店舗を構えており、広さは30坪強という比較的小さな店舗で、店の内装は純和風である。社長は女性で、ホールには入らず管理部門専門。その他の社員は、メインシェフで料理長が1名と、その他厨房が正社員とパートの2名、ホールスタッフは4名で皆パートである。
当社は4年前に設立。設立当初はメインのシェフは現料理長の他にもう1名いて、現料理長はフレンチ専門で、もう1名は和食専門であった。設立当初は和食が中心で、店舗の雰囲気も和を基調とした店づくりである。しかし、メインシェフ同士が仲たがいを起こし、和食専門のメインシェフが退社、残ったフレンチ専門のシェフがメインとなり、料理長となった。しかし彼は和食料理が不得意であり、和食とうたいながら提供する料理はやや洋食に偏っていった。その結果、店づくりは和風であるが、提供する料理は洋風の和食という、コンセプトが迷走している状況であった。
メインシェフは非常に頑固な性格であり、次第に社長と対立していった。さらにメインシェフは周囲のスタッフにも非常に厳しく接するため、誰もメインシェフに話しかけることができなくなっていた。
財務状況
設立して2年は黒字経営であったが、設立3年目で赤字に転落、4年目は赤字が膨らみ資金繰りも厳しい状況に陥った。これは料理長が、より多くの顧客を獲得するために、安価な料理を開発するようになったことが要因の1つである。そのため、固定客がつかず顧客数は減少、さらに料理の単価を下げることで客単価も下がってしまい、一気に業績は悪化してしまった。
問題点
問題点は、まずはコンセプトが曖昧であることである。店舗づくりが純和風である一方、料理長の専門はフレンチで和食を苦手としている。そのためメニューに「ウリ」がなく、固定客がつかなかった。
また、百貨店内にあるため、買い物ついでの顧客が中心になり、15時以降はほとんど顧客が入らなかった。そして夜も百貨店に合わせる必要があるため、ラストオーダーが19時半で、夕食目当ての顧客を取り込むこともできていなかった。
さらに、料理長自身も努力をして様々な料理を開発するが、フレンチ専門である料理長が和食料理を作っても中途半端になって魅力に欠けていた。しかし社長は、料理長との対立を恐れ、遠慮して指摘することができなかった。
強み
強みは、料理長のフレンチの高いスキルであり、フレンチではかつて世界のコンクールでも入賞するほどの腕を持っていた。
また、現在のコンセプトには適合しないが、純和風の店舗は上品で高級感のある雰囲気を持っていた。
その他、ホールスタッフは、料理長とは対立するものの、社長には非常に忠実で、接客態度も良好であった。料理好きのスタッフも何人かいる。
さらに、店舗が百貨店内にあることである。個店と比べてブランディングは難しくなるが、百貨店内の顧客を取り込むことができるため集客は楽であり、百貨店の顧客層を取り込むことができる。
改善策
改善策は、まずはコンセプトを明確にすることである。高級感のある純和風の店舗の雰囲気と、メインの料理人であるフレンチ専門の料理長は、変更することができない。そのため、店舗のコンセプトを「和風フレンチ」とする。この和風フレンチを前面に出すことで、料理長の得意とするフレンチ料理をメインにして、ワンポイントで和風を加えるということが可能となる。これで料理長が苦手な和風をベースに料理を開発するのではなく、フレンチをベースにすることが可能となる。
次に、料理単価を上げることである。百貨店は、年配女性で高級志向の顧客も多く存在するため、高級感のある店舗の雰囲気で、高級感のある料理を堪能したいという顧客層は多いと考えられる。そして彼女達が百貨店に買い物に来る度に当店舗によってくれればリピート率は上がる。
続いて「和風フレンチスイーツ」の開発である。昼以降夕方までの顧客を取り込むにはスイーツを強化する必要がある。そしてスイーツのコンセプトを「和風フレンチスイーツ」として高級感を出すことで、客単価向上を狙う。ただしスイーツは、「味」「見た目」「ボリューム」のそれぞれに徹底的にこだわることが重要である。
最後に、社長と料理長のコミュニケーションをしっかり取ることである。社長が、特に開発する料理については、遠慮せずに指摘すべきことは指摘しなければならない。そのため、開発する料理は必ず最終決断を社長にすることとし、社長からの提案も行える体制を構築することである。また、ホールスタッフも巻き込んで料理の質を高めていくしくみも必要である。