製薬関連機器製造/事業再生(事業DD)

事業概要

 製薬関連機器等の製造業で、勤続・樹脂・ゴム・ガラスなど各種加工の特注製品を、製図から制作、配送までワンストップで対応している。

 当社の製品は、大きく「量産品」と「特注品」に分かれている。

 量産品の販売先は1社のみであるが、売上全体の3割を占めている。

 特注品の販売先は60社以上あり、その多くは顧客側で製図を行わないため、要求に対して当社にて製図の工程が入るのが特徴である。

 具体的には、顧客の依頼に対して、当社が制作物のイメージや寸法等のヒアリングを行い、その後自社にてCADを使って図面を作成し、見積書と合わせて図面を顧客に提示する。

 この工程は、他社にはできない当社の強みとなっている。

 また、当社は様々な加工をワンストップで請け負っており、当社工場で行う加工は金属の切削加工と溶接であり、それ以外は外注である。   

業績

 当社の業績は、長年経常利益で黒字を維持しているが、売上高経常利益率は1%程度であり、長年利益は低迷しているといえる。   

強み

 当社の強みは、1つめは様々な加工をワンストップで対応できることである。

 これは、社長の高い知識と経験によるものである。

 2つめは、顧客の要求に対して迅速に製図を行うノウハウを保有していることである。

 3つめは、多くの製薬関連の得意先との信頼関係である。

 上記の製図を行うことで囲い込みができている。

 4つめは、自社で実施できない加工の外注先を確保していることである。

 これにより、顧客からワンストップで対応することができ、顧客との直接取引に寄与しているといえる。   

問題点、課題

 当社の最大の問題は、特注品の利益率が低いことである。

 本来であれば、量産品(見込生産)よりも、受注生産の特注品の利益率が高いはずであるが、顧客別の利益率を見ると、量産品と特注品の粗利率はほぼ同等であった。

 これは、受注生産の見積の計算方法に不備があることが原因である。

 具体的な不備は以下のとおりである。

・見積原価には、経費とロス費が考慮されていない。

・見積の労務費の合計が、決算書の労務費の半分程度と大幅に下回っている。これは見積時の労務費の産出額が不足していることを意味する。

・本来であれば受注生産は競合がないため高い利益率が望めるが、量産品と同じ利益率で計算している。

 その他、当社は図面チェックが未徹底のため、ミスが多く、ロスも多い状況である。

 ロス費が見積に含まれていないことも問題であるが、そもそもロスを削減する体制が構築されていないことが問題である。   

改善策

 1つめは、見積の計算方法を改善することである。

 具体的には、まずは労務費を正確に見積る必要がある。

 本来であれば、実際の作業時間を割り出し、見積の作業時間との差異分析を行った上で改善することが望ましいが、当社には実際の作業時間のデータが残っていない。

 そのため、合計の差異が2倍の開きがあるため、個別に調整は必要ではあるが、とりあえずは労務費を通常の見積金額の2倍に設定することが望ましい。

 さらに、粗利率を通常よりも高く設定することである。

 受注生産のため競合はなく、図面作成やワンストップ対応などにより既存顧客の囲い込みができているため、見積金額をある程度高く設定しても顧客が流出する可能性は極めて低いといえる。

 これにより、一気に売上高経常利益率を改善することが可能となり、健全な経営を行うことができる。

 さらに、図面のチェック体制を強化してミスをなくし、ロスを削減する取組みも合わせて実施することが重要である。

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