事業概要
旋盤加工専門の金属加工会社。旋盤装置2台を保有。
社員1名の小さな町工場で、売上高は数千万円。事務員もいないため、社長が製造活動、営業活動、金融機関への対応などすべてをこなしている。創業して10年経過しているが、社長は他業種からの参入のため、安定した固定客をつかめず苦戦している。
社長の技術力は非常に高く、旋盤加工のみで、薄物、深穴、複雑な形状の加工が可能。また、樹脂から被削材まであらゆる素材に対応できる。さらに、30年以上も前の図面の製品化を依頼されて対応するケースもある。
財務状況
売上は横ばいで推移しているが、価格競争が激しく、営業利益マイナスが続いている。材料は顧客から支給されるため材料費はほとんどなく、限界利益率(限界利益率=限界利益÷売上高、限界利益=売上高-変動費)は80~90%と極めて高い、高固定費のビジネスモデルである。そのため、売上高の少ない企業にとっては利益が出すのが難しい。
また、顧客別売上高の推移を確認すると、上位数十社はある程度固定されているが、これら上位顧客の売上高は大きく変動しており、安定していない。これは、当社が難易度の高い個別案件をメインに受けていて、かつ低利益率で受注しているからである。量産品は、社長1人で設備も限定的なため当社には依頼が来ない。
なお、売上高借入金比率は200%を超えており、金融支援を継続的に受けているが、もし約定返済に戻す場合は売上高が2億円追加で必要になる。そのため、事業を継続していくためには、今後も金融支援を受け続ける必要がある。
問題点
難易度の高い、他社ではできない加工を請け負っているが、価格は量産品と同等で受注していることが最大の問題である。当社のビジネスモデルは高付加価値モデルであり、少ない数の高付加価値の案件を高利益率でなければビジネスが成り立たない。しかし当社は、自社で見積算出方法を決めてはいるが、ほぼ顧客の言い値で受注している。
また、当社はホームページや営業ツールがなく、当社の強みが伝わらないため、新規顧客の開拓も十分にできていない。
強み
強みは、社長の旋盤加工の高い技術力である。薄物、深穴、複雑な形状の加工が可能で、樹脂から被削材まで、あらゆる素材に対応できる。さらに、30年以上も前の図面の製品化を依頼されても対応できるノウハウを持っている。
改善策
改善策は、難易度の高い加工の案件は十分な高値で受注することである。社長並の高いレベルで加工する技術は、他社にはないものである。社長自身は失注することを懸念しているが、安値の案件であれば失注してもいいという覚悟が社長には必要である。
また、ホームページや営業ツールで、当社の技術を具体的に明文化すること、そして事例を掲載することで、当社の価値を見える化することが重要と言える。そして営業ツールを使って新規開拓を積極的に実施する。昔の図面の加工で悩んでいる会社は多いため、そこをターゲットにして高付加価値で受注していけば、より多くの顧客から、高利益率で安定した受注を獲得できるようになる。