事業概要
通販などの商品を保管・加工・梱包して、都度の依頼に応じて指定先に販売する物流事業。顧客や商品によって加工や梱包方法が異なり、さらには同じ顧客の同じ商品でも、案件に応じて加工方法が異なる(リボンをつける等)など、業務が非常に煩雑であり、典型的な労働集約型業務内容である。
主な作業内容は以下である。
① 入荷予定情報の確認
② 品物入荷、入荷品の確認
③ 入荷作業(作業現場へ移動、荷主ラベル発行・貼付、検品、バーコード読込)
④ 入庫作業(棚入れ、棚の場所の登録)
⑤ 出荷準備(出荷依頼の加工等の詳細確認、受注データ生成、データチェック)
⑥ 出荷指示(現場指示、送り状作成、備考対応)
⑦ 出荷作業(送り状・指示書運搬、出庫、検品、梱包、出荷)
⑧ 出荷完了作業(顧客への連絡)
問題点
当社の問題点は山積みであり、常に現場は混乱していた。具体的な問題点は以下の通りである。
① 煩雑な業務を統制する現場責任者が実質機能しておらず、個別の業務に対応しきれていない。そのため現場は常に混乱し、現場作業員は不満を抱えながら何とか業務を回していた。
② 実質的現場統括者がおらず、顧客の個別要求情報を現場に徹底するしくみもないため、1人の正社員が現場のパートに逐一指示をし、指示しきれない内容については、その正社員が自ら走り回って処理していた。また、個々の個別業務をすべて理解しているのはその正社員1人であり、現場のパート社員は、1つ1つの作業内容について、個別にその正社員に確認を取って作業を行っていた。
③ 独自で構築したシステムが細かい個別の要求を想定していないため、備考欄に膨大な個別要求情報を記載しなければならなかった。
④ 顧客が当社システムを使いこなしておらず、システムの使い方の指導も不十分なため、必要な情報を備考欄に記載しない顧客も多く、逐一顧客にメールで確認を取らなければならなかった。その作業も、その正社員がすべて行っていた。
⑤ システム情報だけでは、具体的作業内容の把握は困難であった。さらに個別作業の内容は、営業が作成する「ヒアリングシート」と、現場が作成「荷主情報」に分散され、どちらの記載も不十分であり、実質形骸化していた。
⑥ 個々の作業ルーチン全体を整理された作業フローがなかったため、その正社員もすべてを把握しきれておらず、作業の度に、ヒアリングシートや荷主情報の確認、あるいは顧客からのメールの確認という業務が発生していた。
⑦ 新規で顧客を獲得する際、当初顧客の作業をヒアリングするのは営業担当であり、その情報が現場に十分に伝えられず、新規顧客の初回作業は通常以上に混乱するため、現場は新規顧客の対応に非常に消極的であった。しかし、経営者側は積極的に新規開拓を進めるよう指示を出し、それに応えるように営業は新規開拓を行うため、現場作業員は経営者に不満を持ち、現場作業員と営業マンは大きく対立していた。
⑧ 本ビジネスの原価はほぼ人件費であるが、実際の料金は、この人件費を十分に反映されていないため、売上は増加しても利益の増加は非常に少ない状態であった。つまり、顧客が増え、売上が増加するほど、現場作業員の負担が増えるだけで利益はほとんど横ばいの状態であった。
上記のとおり、現場は様々な問題を抱えており、顧客の要望どおりに作業が行われずクレームになるケースも発生していた。
強み
当社の強みは、大手物流センターが実施しない、個別の詳細な作業を請け負うことである。そのため、ターゲット顧客に対し、当社の強みをしっかりアピールする個別営業を実施すれば、高い確率で採用が決まった。
そのため、当社の強みを活かしつつ、迅速かつスムーズに、個々の顧客の作業を把握し、案件ごとにスムーズに作業を行う体制づくり、その作業に見合った料金体制づくりがポイントとなる。
改善策
まずは、顧客・商品単位で、作業フローを丁寧に作成すること、つまり、「ヒアリングシート」と「荷主情報」を廃止し、「作業フロー表」として1つにまとめ、パートを含めた作業全員に共有することである。営業と現場がこの作業フロー表に最初に入力し、その後更新してブラッシュアップしていくことで、常に最新の作業が営業と作業現場で共有できるようにする。このフロー表を作成した上で、各工程の各作業について、現存する様々な問題点をピックアップし、改善施策を検討する。この際、パートも含めたメインの作業員と合同で作業フローを作成しつつ、問題点のピックアップと改善施策の提案を行う。この作業を、1社・1商品ずつ、地道に実施していく。これには多くの時間と労力がかかるが、作業量の多い、荷物の多い顧客から順に実施していく。
次に、顧客にシステムの入力方法について徹底指導し、顧客が漏れなく情報をシステムに入力できるようにして、現場担当者が個別にメールで確認する手間を省く。この顧客指導は営業が担当する。また、システムについても、可能な限り使い勝手を改善していく。
続いて、現場を統括する人材を選定し、彼に権限を与え、柔軟に指示が出せる体制を構築する。現在実質統括している正社員は一作業員であるため、指示する人材と作業員と明確に分けることで、迅速かつ的確に(ミスなく)指示が出せるようにする。
また、初回の顧客については、営業と現場責任者等が顧客と一緒に作業内容を構築し、決まった作業を作業フロー表に落とし込み、確実に現場で共有できるよう、初回に作業フローを指導する打ち合わせを実施する。こうして新規顧客を受注しても、現場で混乱なくスムーズに作業を開始できるようにする。
さらに、見積の精度を高め、収益状況を改善する。個々の作業をピックアップして、現場の作業量を割り出し、利益が十分に出るようにそれぞれの単価を出す。そして見積もり作業は機械的に実施できるようにする。
こうして、煩雑で膨大な作業を改善するには、1つ1つ整理して改善していくことが重要である。