事業概要
葬儀などの際に食事を出す仕出し事業。葬儀やお通夜などの後にふるまう料理の提供が主であるが、それらの準備や接客も実施しなければならない。葬儀はデリケートな環境であるため、料理や接客には細心の注意が必要であり、料理に不備があったり、接客に問題があったりすると大きなクレームにつながる。そのため、食材は多めに用意したり、作業スタッフも多めに派遣したりすることが慣習となっていた。しかし、この余剰食材や余剰人員が経費の増大を招き、収益を圧迫して赤字が続いていた。
当社の企業規模は、売上1億円程度、正社員は6名、パート10名である。
キャッシュがマイナスの期が続き、常に資金繰りが厳しい中で経営を続けていた。金融機関からは短期継続融資(短コロ)の支援を受けていたが、それでは足りず、追加の融資や、社長自身も個人の資金を投入し、社長の親からも借金をしていた。
しかし、いくら金融支援を続けても一向に利益が出ないため、社長は金融機関から大幅なリストラを断行するよう迫られた。そして社長は金融機関の指示どおり、給与の高い、当社の事業の中核の人材をはじめとする大量の解雇を実施した。
その結果、人件費は大幅に削減され一時的に黒字になったが、事業をコントロールする人材がいなくなってしまった。そして社長以外に正社員は1名と、残りはアルバイトだけとなったため、事業の品質は大きく低下し、顧客からクレームが増えて受注も減少してしまい、売上は減少、すぐに赤字に転落した。
この状況を見て金融機関は支援を断念し、短期継続融資を停止した。当社はいよいよきびしい状況に陥った。
このような中、当社はコンサルティングの依頼を受けた。
コンサルティング支援
当社が依頼を受けた月末には資金ショートするという状況であった。そのため、早急に事業環境の調査を行い、今後の改善策を見出すと共に、足元の資金ショートへの対策を社長と議論した。社長自身は個人の資金をすべて会社につぎ込んでいたため資金に余裕はなかった。そこで、社長のご両親から再三融資を受けていたが、再度、ご両親に依頼してもらうようにした。社長は数ヶ月前にも「今回が最後」と言って借りたばかりだったため、最初は拒否されたが、今回はコンサルタントの支援が入ることを伝え、粘り強くお願いをして、200万円の借入が実現した。
しかしそれでも、従業員への給与の支払い分が不足したため、従業員に給与の支払いを待ってもらえるよう懇願した。そして社長の人望と会社を再生させたいという想いが伝わり、従業員も承諾してくれ、何とか資金ショートは回避できた。
資金繰り問題が無事に回避できたため、早速、以下の4つの軸で仕出し事業の改善に取り掛かった。
① 品質改善
仕出し事業は、正社員の大幅リストラでサービスの品質が大きく低下していた。そこで、社長自ら現場に出て手本を見せ、パート達に丁寧に指導するようにした。また、シフト管理を社長直轄として徹底的に見直して、無駄な人件費や外注費を削減した。その他クレームは社長が窓口となって対応し、問題点を定例会議でスタッフ全員に共有させ、改善するしくみを構築した。
② 既存顧客へのトップ営業
現場の品質低下により離反した顧客に対して、社長にトップ営業を行った。これまでの品質の低下を陳謝して、具体的な品質改善方法を、「品質向上の施策」のツールを作成して、1件1件丁寧に説明に回った。これですぐに、顧客数社が当社に戻った。
③ 販促強化
事務員は、社長の指示でしか動かず、日々の販促が不十分な状態だった。そこで、企業や学校などのイベントの年間スケジュールを作成し、スタッフ自ら各月でDMを送付できる体制を構築した。さらに配布チラシを全面的に見直し、HPやニュースレターを活用して、リピート購入のしくみを作った。これらのほとんどの作業を事務員で行うようにした。その結果、スタッフのモチベーションは向上し、自ら積極的に販促の提案するまでになった。
④ メニューの見直し
競合他社のメニュー表と比較して、自社の料理品数や見栄えなどを徹底的に分析した。それから、原価を含めた販売シミュレーションを行い、顧客が満足でき、かつ十分利益が取れる品揃えを選定して、全面的にメニューを刷新した。
これらの支援により、わずか4ヶ月で、月々の試算表レベルで黒字化するまで業績は改善した。