金型・プレス加工業/事業再生(事業DD、実行支援)

事業概要
 金型製造とプレス加工を行う会社。企業規模は、売上高は5,000万円程度、社員5名(外注1人含む)で、社長と息子が金型製造とプレス加工を実施、社長の妻が経理、納品活動は一般社員、そして営業活動は外部の知人に委託しているという、家族経営に近い体制である。
 昭和30年創業と社歴は長いが、競争が激しく、近年は売上が減少傾向のため、「金型製造+プレス加工」の双方での受注のみ受け付け、「金型製造」のみの注文は断っている。理由は、金型のみだと単発で安定した売上にはならないこと、さらに金型販売で図面を提示することで技術が流出してしまうためである。
 なお、金型加工の見積は、「材料費」「脱脂費(補助材料費)」「外注費」「加工費」「管理費」という構成で作成することが慣習となっている。当社は、この中で利益になるのは「加工費」であるが、この加工費も「回転数」と「数量」によって決定される(1分間で何個できるか)ため、特殊な技術や差別化が利益に反映されにくい。つまり、「高単価によって少量でも高い利益率を狙う」という、中小企業が取るべき差別化集中戦略で、利益を出しにくい業界であると言える。

財務状況
 売上は年々減少している。以前は社長の交際費が膨大であったが、近年は大幅に削減し、その他、使用頻度の低い施設や駐車場を解約して地代家賃を削減するなど、経費削減に取り組んでいる。しかし十分ではなく、依然として営業利益はマイナスが続いており、直近の営業利益では▲500万円(売上高営業利益率▲15%)まで悪化している。また、人材の削減には取り組んでおらず、売上高人件費比率は年々上昇し、直近では50%超となっている。
 資金繰りが厳しく、当座比率は30%台にまで下落し、自己資本比率は▲100%を超える大幅な債務超過となっている。
 社長の奥さんが経理を実施しているが、社長自身が数字を苦手にしており、社長は担当税理士から毎月試算表の説明を受けているが、理解が不十分で、危機意識が不足している。

問題点
 問題点は、営業を外注担当者任せにして振り返りを怠っていること、営業戦略を構築していなことである。外注担当者は、自社の強みを一応は理解しているが、詳しい訳ではなく、明確に伝えられていない。また、外注担当者は以前大手電機メーカー出身で、大手企業に広い人脈を持っており、訪問先は大手メーカー向けが中心となって、なかなか受注に結び付いていない。
 その他、ターゲットが不明確化なため、外注担当者の訪問しやすい顧客を回っているだけである。さらに、営業ツールがなく、外注担当者は当社の技術を詳細に理解していないため、受注につながるピンポイントな提案ができておらず、多くの企業を回っていても受注に結び付いていない。

強み
 当社の強みは、その加工技術の高さである。「超薄型」「超小型」「複雑形状」の加工技術が高く、製品図面を見ただけで金型の工程をイメージでき、工程の簡素化による低コスト化が可能な高い設計力も持っている。また、金型を1㎛の誤差で作成可能である。 競合他社でも、ここまで高い技術を保有しているところは少ない。

改善策
 改善策は大きく2つ、収益管理の徹底と、営業活動の見直しである。
 収益管理は、毎月の試算表を確認し、収益状況を把握し、早急に対策を打つ必要がある。具体的には、人材の見直しである。社長の息子がすでに高い技術を承継しており、設計や製造をメインで担っているため、社長自身の手待ちが多くなっている。そのため、納品や営業活動は社長が行うようにする。それにより、高い人件費を削減でき、かつ営業活動は社長自身が行うため提案の質は向上する。
 営業戦略は「同業者向けの営業強化」である。同業者は新規取引開始のハードルがなく、案件が発生すれば受注につながりやすい。同業他社は、微細加工などで悩んでいるケースもあるため、それらを請け負うようにすることで、安定した受注を獲得できると考えられる。

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