事業概要
地方の居酒屋・飲食店。駅から徒歩1分で、近くにビジネスホテルも多いため好立地である。店内は50坪程度。業績は黒字であるが、地元客からの評価は低く、食べログで点数も極めて低い。そのため、旅行客からは人気で旅行シーズン中は賑わうが、オフシーズンではぱったりと人が来なくなってしまう。そのため季節の繁閑差が大きい。
財務状況
売上は5,000万円程度。営業利益は10%程度である。旅行客がメイン顧客であるため、他社より高い価格設定をしても、オンシーズンは賑わい、夏のピーク時には大幅に売上が増える。一方でシーズンオフになると一転して売上は大きく落ち込み、閑散期では月次で赤字に陥ってしまう。
問題点
当店は様々な問題点を抱えている。まずは、貝類専門とうたっているが、貝類メニューが他と比べて多い訳ではなく、通常の居酒屋メニューと変わらない。内部はハイボールなどメーカーのポスターやPOPがベタベタと貼ってあり、貝類専門の雰囲気を感じさせない。店内のオブジェも、貝類ではない魚がぶら下がっており、オブジェは埃にまみれていた。また、椅子やテーブルは安っぽく、店内に自販機やテレビもあるため、貝類専門ではなく、大衆食堂のようなイメージとなっている。
なお、従業員の態度も問題で、厨房とホールのスタッフが大声で笑ったり、ホールスタッフが顧客の見えるところでコーラをラッパ飲みしたり、ホールに置かれているテレビを見たりするなど、接客態度は極めて悪い。当社には接客マニュアルがなく、おもてなしについて指導する人材もいない。
インバウンドの恩恵を受けて、危機意識が欠如し、経営改善に真剣に取り組んでこなかった結果、社長自身がスタッフへのコントロールがきかない状態に陥ってしまっている。
強み
社長自身が新鮮な魚介類を仕入れており、特に魚介類は新鮮である。社長の仕入先のパイプは広いため、その日のよい食材の仕入が可能となっている。
また、駅に近く、ビジネスホテルも多いため、極めて好立地と言える。
改善策
まずはコンセプトを見直す。「貝料理といえば当社」というブランドを確立するために、社長とスタッフがこのコンセプトを目指すようにする。そして、このコンセプトに合わせて、メニューの見直しや店舗を改善する。
メニューは、まずは原点回帰である。通常の居酒屋メニューは撤廃し、徹底的に貝類にこだわったメニュー作りを行う。同じ素材でも、異なる調理方法でメニューを増やす。飲食店は何と言ってもメニューが最重要であるため、料理の味・種類・見た目・素材などは徹底してこだわる。
さらに店内も、メーカーのPOPやポスターを取り外し、貝類以外のオブジェも排除する。当然、自販機やテレビも撤去する。このように、コンセプトどおりのブランドイメージを獲得できるよう努める。
次に、社員教育である。簡単なマニュアルを作成し、アルバイトにはまず最低限のマナーを学ばせる。そしてホールの責任者を1名任命して接客指導責任者とし、OJTで改善を図る。
以上のように、コンセプトを打ち出して差別化を明確にし、商品力を高めて接客を磨いていけば、地元客は徐々に戻ってくる。早急に地元客を増やすには、コンセプトどおりの商品メニューや接客が実現した段階で、期間限定で地元客に割引券付きチラシをポスティングする。改善した料理が、集客した低価格目的の顧客をリピートにできるかどうかがポイントである。そのため、割引メニューも、どの顧客層をターゲットにするかで決めることが重要である。