海外エンターテイメント興行業/事業再生(事業DD、実行支援)

■事業概要

 当社は、海外のエンターテイメント(オペラ、バレエなど)のアーティストや団体を国内に誘致して、全国の会館(ホール)などで開催するための運営管理を行っている。

 社長は海外の様々な事務所やアーティストと人脈があり、社長自身が選んだ団体や個人と直接交渉をして国内に誘致している。

 そして社長個人の「目利き力」で、超一流ではないが実力のあるアーティストや団体を誘致し、比較的安価なチケット価格で提供できるようにしている。  

 本事業は、社長自身、あまり有名ではない海外アーティストや団体を、適正料金で日本に広めたい、という強い思いを持って事業を営んでいる。  

 また、誘致やスケジューリング、旅券や宿泊手配なども自社がワンストップで行うことで、コストを抑えている。  

 さらに、社長自身が、長年の自社運営により全国のホールや会館ともつながりを持っていることも強みの1つである。  

 国内でのイベント運営の方法は大きく4種類ある。  

 1つめは「会館主催」であり、全国の会館やホールへ公演を丸ごとパッケージとして販売する方法である。

 これはチケットの売残りリスクがないため自社にとってベストな手法であるが、会館・ホール側にリスクが大きいためこの契約を獲得するのは難しい。  

 2つめは「会館共催」であり、会館側に快感使用料を持ってもらって開催し、チケット販売の一部を会館側へ渡すというものである。  

 3つめは「名義主催」といって、TV局のプロモーターがマネジメントを行う方法で、TV局側がチケットを販売するもので、格安でCMが出せる。  

 4つめは「自社主催」であり、自社が会館を借りて、チケットも販売する方法。    

問題点・課題

 1つめは、赤字が続いていることである。

 社長自身が案件単位で詳細に見積を作成しているが、それでも赤字の公演がでてしまう。

 原因は2つある。

 1つは想定したほどチケットが売れないこと、そして見積もり自身に課題があることである。  

 当初の予定よりチケットが売れないのは、日本で集客力があるアーティストや団体であるかどうかの判断が不十分であることが要因である。

 社長自身のこだわりが先行してしまい、「人気があるなし」の判断ではなく「人気が出てほしい」という重いが先行してしまっている。  

 そして見積もりの課題は、見積は粗利をベースに作成しているが、決算書で販管費(固定費)に分類される勘定科目が大きく、粗利レベルでプラスであっても、結局営業利益でマイナスに陥ってしまうことである。    

■改善策

 改善策の1つめは、まずは見積作成方法を改善することである。

 具体的には、現在の見積作成時に考慮している経費は、非常に細かく算出しているが、販管費でかかる固定費が含まれていない。

 そのため、損益計算を誤り、チケット料金を安価に設定しすぎてしまっているのである。

 そこで、見積システムに販管費(固定費)を追加する必要がある。

 具体的には、前年度のPLをベースに、案件の売上に対する前年度のPLの割合に応じて、案件の見積に、前年度の販管費を組み入れるのである。

 これでチケットの料金と、販売数量の設定を行って、損益管理の質を向上させる。  

 改善策の2つめは、儲かるアーティストや団体の絞り込みである。

 社長は、自身が見込んだ実力のあるアーティストや団体を日本に広めたい、という強い思いを持っているが、ニーズがなく集客ができなければ意味がない。

 そのため、この社長のこだわりや想いは中長期的施策として先延ばしし、まずは儲かるアーティストや団体に絞り込むことで、収益改善を図る。  

 改善策の3つめは、アーティストや団体のブランディングである。

 まずは、SNSへの発信を強化することで、アーティストや団体の知名度を向上させることが有効と考えらる。

 今後誘致するのは、一定の知名度のある団体に絞り込むことで、日本人でも受け入れやすい団体となるため、彼らをSNSで発信することで、さらなる知名度向上に役立ち、それが今後の集客につながる考えられる。

 さらに、公演終了後に、握手会や物品販売などを行うことで、顧客とのつながりを強化して、固定客化、リピート化につなげ、さらに口コミによるファンの増加につなげる。

 改善策の4つは、海外だけでなく、国内の、さらに都心で集客力のあるイベントを担いで、地方に展開することである。

 国内の都心で集客力のあるイベントなどを地方に展開できれば、海外誘致よりコストや負荷がかからず安価に運営でき、かつ数もこなせるため、確実に収益を上げられる可能性は高まる。

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