スモールPMIのビジネスDDの経営・組織チェック項目
スモールPMIでチェックすべきビジネスDDの「営業・販促」は概ね以下のとおりである。これらについて詳細を明記する。
【スモールPMIのビジネスDDの営業・販促チェック項目】
- 3C分析
- 営業の種類と手法、ツール・ネットメディア
- 営業管理
3C分析
<確認項目>
- 商品・サービス
- ターゲット顧客
- 競合他社
- 強み・価値
- (差別化要因)
- 顧客ニーズ
- 4P
<内容>
●商品・サービス、ターゲット顧客、競合
「商品・サービス」は、文字通り、同社が取り扱っている商品・サービスを明記する。様々な商品を取り扱っている場合は、カテゴリーに分けて明記する。
「ターゲット顧客」は、当社が狙っている顧客層を示し、そのターゲット顧客に向けて活動しているかを評価する。
なおターゲットが不明確な場合や、ターゲットがあっても実際にはそのターゲット向けに活動していないケースは多く見られるため、その場合は「ターゲット顧客」と「実際の既存顧客」を分けて明記する。
「競合他社」は、実際に競合となる企業を明記する。また、実際には競合することはなくても、将来競合となる可能性のある、企業や業種についても、その旨を記載する。
●強み・価値、顧客ニーズ
「強み・価値(差別化要因)」は、自社の商品・サービスに関する強みや価値(顧客にとっての便益)を明記する。
この強み・価値が、譲渡企業の買収後の成長戦略の源泉となり、また、買収後の経営統合によるシナジー効果を発揮させるための源泉にもなる。そのため、極めて重要な情報になるのでヒアリングで徹底的に抽出する。
強みを抽出するポイントは、問題点の原因究明と同様、「なぜなぜ分析」で掘り下げていくことが有効である。
例えば、商品の強みとして「商品の使い勝手がいい」とあったとしても、商品の何が、どのように使い勝手がいいのかがわからない。
そこで「なぜ使い勝手がいいのか」を、真の強みまでたどり着くまで掘り下げていけばいい訳である。
「顧客ニーズ」では、ターゲット顧客が求めるニーズを整理する。もし「顧客ニーズ」と「同社の強み」が合致していなければならない。
例えば、他社にはない様々な機能を付加しても、ターゲット顧客は「多機能は不要、機能を絞って安価で使いやすくしてほしい」というのがニーズであれば、商品を見直すか、ターゲットを切り替える必要が出てくる。
●4P
4Pとは、商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の頭文字を取ったもので、自社の強みと問題点を4Pの切り口から分析する。
営業の種類と手法、ツール・ネットメディア
<確認項目>
●営業の種類・手法
- 営業の種類
- 営業戦略・
- 営業方針
- 新規顧客開拓の手法
- 既存向け営業の手法
●ツール・ネットメディア
- 会社案内
- 商品紹介ツール
- 事例集
- その他紙媒体ツール
- ホームページ
- SNS
<内容>
●営業の種類・手法
「営業の種類」は、法人営業または個人営業、そして直接営業または間接営業のいずれか、あるいは双方かを踏まえて記載する。
「営業戦略・営業方針」は、営業活動や方針について確認し、それらによってプラス面・マイナス面がないかを分析する。
例えば、プラス面では「顧客を絞る戦略によって効率的な営業・販促活動が実施できている」、マイナス面では「顧客を絞り過ぎて営業活動が限定的になる」「目標利益率を高く設定し過ぎて受注の機会を逃す」などがある。
「新規顧客開拓の手法」は、新規開拓営業をどのように実施しているのかを確認する。具体的な営業手法と、新規開拓の頻度や実績を確認し、その効果を検証する。
「既存向け営業の手法」は、既存顧客のリピート・横展開営業について確認する。営業担当が既存顧客向けに実施している日常の営業活動を明記し、その活動は効果があるのか、無駄はないのかを評価する。
例えば営業マンが1個から顧客に配達まで行ってたとすると、これが高コストの要因となっているため、有効な活動であるとは言えない。
●ツール・ネットメディア
営業・販促ツール、ネットメディアの分析内容は、各ツールの実施有無とその内容について評価するが、総合して言えることは、
①会社や商品・サービスの「強み」が明記されているか
②強みが他社と「差別化」されたものとして読み手に伝わるか
- 強みは「顧客のニーズ、ウォンツ」に適合しているか
がポイントで、これらを集中的に確認するようにする。
「商品紹介ツール、事例集」は、カスタマイズ製品や加工、デザイン性の高い商品など、個々の商品で大きな強みが表現できる場合に有効である。
「ホームページ」は、新規顧客が最初に閲覧してその会社を判断する重要なツールである。そのため、前述の3点の他、企業や商品に関するさまざまな情報を記載することが望ましいといえる。
「SNS」では、特にBtoCのビジネスでは、短期間でブランド力向上のツールとして効果的であるため、実施の有無、その内容と効果について検証する。
営業管理
<確認項目>
- 顧客管理システム
- 顧客別収益管理
- 商品別収益管理
- 価格管理
<内容>
「顧客管理システム」は、システムを導入しているか、会計データと連動できているかを確認する。
今後数年の売上を予測する際、顧客別・商品別の上位の売上推移を把握することが重要となる。ただしこれが手入力や手作業だと、事務作業の負担が大きく生産性が悪化するため、システムで自動管理することがポイントである。
「顧客別収益管理」は、顧客別の売上を継続的に管理しているかを確認し、経営や営業活動に活かしているかを評価する。
売上は顧客から得られているため、どの顧客からいくら売上があるかの現状を把握していなければ、自社の状況に適合した具体的な戦略や戦術を構築することはできない。
そのため、5年程度の顧客別売上推移と構成比、顧客数の推移がわかると、個別の顧客状況だけでなく経営全体の安定度がわかる。
「商品別収益管理」は、顧客別と同様、商品別の売上を継続的に管理しているかを確認し、経営や事業活動に活かしているかを評価する。
個々の商品売上の積み重ねが会社全体の売上であり、売上がどの商品からどの程度得られて全体の売上になっているのかの現状を把握できていないと、自社の状況に適合した具体的な戦略や戦術を構築することはできない。
そのため、5年程度の商品別売上推移と商品数の推移がわかると、個別の商品の売れ行きだけでなく、そこから経営全体の安定度も把握できる。
●価格管理
「価格管理」は、「価格表」と「見積」の2点について評価する。
「価格表」は業務を効率化するために必要なため、まずは価格表の有無を確認する。ただし価格表があったとしても、その金額が十分な利益を獲得できる価格になっているのか、例えば適切な原価が算出され、その上で十分な利益率を獲得できる値付けになっているかの分析が必要となる。
「見積」は、受注生産などで、見積金額算出方法が明確かどうかを確認する。
ただし中小企業では、見積の際、原価に材料費のみ計上され、労務費や外注費などが含まれていないなど、その算出方法に不備があるケースも多くある。そのため、見積算出時の原価構成まで掘り下げて評価する必要がある。
例えば、手作業の多い製品では膨大な労務費がかかりますが、材料費のみを原価として労務費が含まれていない、あるいは不十分だと、想定していた利益は獲得できない。
さらに、粗利率の基準があるのか、その粗利率が順守されているのか、担当レベルで安売りに走っていないかの確認も必要である。