スモールPMI実践(発展編)(3) 事業統合② 売上シナジー

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スモールPMIの事業統合「売上シナジー」の概要

スモールPMIの事業統合について、「売上シナジー」の概要は以下のとおりである。これらについて詳細を明記する。

【スモールPMIの事業統合「売上シナジー」の概要】

  • 代表的なシナジー効果
  • 売上シナジー① クロスセル
  • 売上シナジー② 販売チャネルの拡大
  • 売上シナジー③ 製品・サービスの高付加価値化
  • 売上シナジー④ 新製品・サービスの開発

代表的なシナジー効果

●M&Aの目的を踏まえ、持続的な成長のためにシナジーを発揮させる

譲渡企業の課題を解決した後は、更なる収益力の向上や持続的な成長につなげるため、譲渡企業と譲受企業の経営資源を活用してシナジー効果(相乗効果)を発揮させ自社の強みを強化することを検討する。

●シナジー効果の類型をおさえ、優先順位をつけて実行する

代表的なシナジー効果は、主に売上拡大につながる「売上シナジー」と、コスト削減につながる「コストシナジー」に大別され、「コストシナジー」は「売上原価シナジー」と「販管費シナジー」に分けらる。

この場合の「売上シナジー」とは、譲受側と譲渡側がお互いの製品・サービスや販売チャネルなどの経営資源を相互に活用して既存顧客にアプローチしたり、お互いの製品・サービスを組み合わせることでより付加価値の高い新たなサービスを開発するなどして、売上拡大を目指す取組みになる。

そして「売上原価シナジー」とは、主に譲受側が譲渡側の生産現場の改善や調達先の見直しなどを支援することで、譲渡側の売上原価の削減を実現させるための取り組みで、「販管費シナジー」は譲渡側の間接業務の改善を支援することで販管費の削減を実現させ、収益性の改善を図るための取り組みになる。

シナジー効果実現の可能性は多岐に渡るが、当初のM&Aの目的を堅持しつつ、ビジョンの明確化とゴール達成のための戦略・戦術と連動させ、具体的なアクションプランに落とし込む際には、誰が、いつまでに、何を実現するのかについて関係者で情報を共有して進捗を管理することで実効性を高めることが大切になる。

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売上シナジー① クロスセル

●関連商品の購入を勧め、顧客あたり売上高を増加させる

クロスセルとは、顧客に対して関連商品の購入を勧めることで、顧客当たり売上高を伸ばすための取組みのことを言う。

例えばマクドナルドの店員の「ご一緒にポテトはいかがですか?」の声かけや、アマゾンの通販サイトで「あなたへのおすすめ」が表示されることなどが一例である。

M&Aの場合は、譲渡企業と譲受企業それぞれの既存顧客に対して相手側の製品やサービスを提案することで、顧客単価を向上させ売上拡大を目指す。

●闇雲な提案は逆効果、既存顧客のニーズを踏まえた提案を

クロスセルは既存顧客に追加の商品・サービスの購入を提案するため、販売のための追加コストや手間がそれ程掛からないメリットがある。

一方で、既存顧客のニーズやメリットを十分検討した上で提案を行わないと、単に売り込みを受けていると感じさせてしまい、かえって顧客離れを起こす危険性がある。

そのため、M&Aにより新たに獲得した顧客のニーズの把握と、M&Aにより新しく販売できるようになった商品に関する理解(従業員教育)が大切である。

売上シナジー② 販売チャネルの拡大

●M&Aの相手先に顧客を紹介してもらうことで、新規取引先を開拓する

販売チャネルとは、顧客に商品・サービスを提供するまでの販売経路や流通経路のことを指す。

例えば、流通業者を通さない直販や、企業と顧客との間に小売業者あるいは卸売業者を通すケースなど、さまざまな形態がある。

M&Aの場合は、譲渡企業と譲受企業がそれぞれ相手側に顧客を紹介してもらい、自社の商品・サービスの販売を行うことで、売上拡大を目指す。

●少ない労力で取引先を拡大するチャンスだが、情報管理に注意する

販売チャネルの拡大は、特に既存の顧客層が異なる場合や、営業エリアが地理的に重複しない場合などに有効で、上手く活用することができれば、少ない労力で一気に販売チャネルを拡大することができる可能性がある。

ただし、昨今は個人情報の保護や守秘義務に関する意識が高くなっているため、取引先に事前に許可を取るなど、顧客に不信感をもたれないような対応が求められる。

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売上シナジー③ 製品・サービスの高付加価値化

●お互いの製品・サービスを組み合わせ、付加価値アップをはかる

製品・サービスの高付加価値化とは、譲受企業と譲渡企業の既存の商品・サービスや販売チャネルの相互活用をより深化させ、M&Aにより獲得した製品・サービスや、技術・ノウハウ等の経営資源を利用して、既存の製品やサービスの付加価値を向上させることで、顧客に対する提案力の強化や製品・サービスの収益性の向上を目指す取組みである。

●バリューチェーンの拡大は付加価値アップに効果的

既存顧客から更にビジネスチャンスを獲得するためには、例えば、アフターサービスの拡充、顧客管理やメンテナンスサービスの充実、既存商品の周辺サービス・周辺業務・周辺商品の開発など、バリューチェーンの中で自社が提供できるサービスを拡大させる視点がある。

その他、製品・サービス自体を高機能化させるなどの方向性も考えられる。

●十分な商品知識と顧客ニーズの発見がカギ

これら新たな価値を提供するためには、譲渡側と譲受側が現在提供している製品・サービスに関して十分な知識を持ち、既存の製品やサービスでは満たされていない顧客のニーズを発見する姿勢を持つことが重要になる。

そして顧客にとっての「新たな価値」とは、必ずしも新しい機能を付加するだけでなく、既存商品の欠陥を直し、より便利にすることも含むという視点も持つ必要がある。

また、製品・サービスの開発と平行して、それらがいかに顧客のニーズを満たすかを効果的に訴求するための、営業手法や販促手法といったマーケティングについての検討も必要である。

売上シナジー④ 新製品・サービスの開発

●お互いの経営資源を活用し、新製品・サービスを開発する

既存顧客の新たなニーズの掘り起こしや、新規顧客の開拓等の成果を狙い、譲受企業と譲渡企業が保有する経営資源や組織能力を活用し、新製品・新サービスの企画・開発を行う活動である。

●自由闊達に意見交換できる環境を整備する

新製品・サービスを開発は会社の将来を左右する重要事項である。よって譲受企業の経営者は積極的に開発プロジェクトに参加して、開発方針の決定にコミットする必要がある。

そして双方の営業担当者、技術分野の担当者間による緊密なコミュニケーションと相互理解が必要となるため、お互いに自由闊達に意見交換できるような環境を整備していくことが大切である。

●新製品・サービスを事業化する

新製品・サービスを事業化するためには、価格政策、販路や販売施策、サービス体制、クレーム対応などについて、新製品・サービスの開発と平行して、トータルで検討する必要がある。

特に多額の設備投資が必要となる場合には、投資の決断をする前に、商品サンプルを既存顧客や消費者に見せて率直な意見を求めるなど、顧客ニーズに基づく慎重な判断が求められる。 これら譲受側と譲渡側の経営資源を組み合わせて売上アップを狙う取組みは、資本力に劣る中小企業が自社の企業価値を高め、価値を浸透させるための「ブランド経営」の実践としても大切な取り組みとなる。

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