スモールPMIのビジネスDDの製造チェック項目
スモールPMIでチェックすべきビジネスDDの「製造」は概ね以下のとおりである。これらについて詳細を明記する。
【スモールPMIのビジネスDDの製造チェック項目】
- 生産形態
- 製造フロー表と作業レベル評価表
- 製造管理体制と5S
生産形態
<確認項目>
- 生産形態
- 受注生産① 見積金額の精度
- 利益率
- 受注生産② 納期
- 受注生産③ 内部情報伝達
- 受注生産④ 外注管理
<内容>
●生産形態
生産形態には「受注生産」と「見込生産」がある。
受注生産は、顧客からの受注を受けてから生産して出荷する方法で、主に一品ものや特注品、専用品の生産形態である。
見込生産は、あらかじめ見込みで生産し、顧客から注文が入ってから出荷する方法で、主に汎用品の生産形態である。
●受注生産
「受注生産」では4つの項目で評価を行う。
1つめは「見積金額の精度」で、必要な原価が見積もられているか、見積算出式の精度が高いか、そして十分な利益率が確保されているかの確認で、収益を決定する非常に重要な項目と言える。
見積算出式が決まっていても、必要な原価が含まれておらず、算出式自体に問題があれば、想定した利益を確保できない。
例えば、手作業が多く、多額の労務費がかかっている製品において、原価に材料費しか反映されていなければ高利益率は望むことはできない。
2つめの「納期」は、納期の精度が高いか、そして納期の見積と実績の差異分析をして改善するしくみがあるかがポイントとなる。
生産リードタイムが見積以上にかかるということは、労務費、つまり原価がアップするということなので注意が必要である。
3つめの「内部情報伝達」は、設計データが迅速かつ正確に製造部門に伝わっているかがポイントで、ここに問題があると、繰り返しの情報確認や作り直し、生産リードタイムの長期化を招いてしまう。
問題の主な要因は、製造指示書フォーマットの不備、情報収集者のスキル不足等である。
4つめの「外注管理」は、品質が高く迅速に対応する外注先を確保しているか、外注先の納期遅延や品質問題が起きない管理体制ができているかである。
また、内製と外注の見極めができているかも重要で、その他内製できる作業を外注に出していないかも確認する。
●見込生産
「見込生産」は、需要予測の精度が高いか、生産工程に機械や人の無駄はないか、材料・完成品の在庫は適正か、安全在庫は適正か、死蔵在庫はないかなどを確認する。
製造フロー表と作業レベル評価表
●固定費と限界利益の論点
生産性を向上させるためには、IT化による作業効率化の他、設備の稼働率向上や従業員のマルチタスク化により、限られた固定費の活用機会を増やし、限界利益への貢献度を増やすことが重要である。
具体的には、設備と人の稼働率向上とボトルネック解消により、設備と人の稼働の「空き」を解消することである。
なお、中小企業の製造業の多くは労働集約型で、設備をフル稼働させて大量生産を行う企業は少数派である。そのため実際に稼働率とボトルネックで問題になるのは、設備よりも「人」になる。
例えば、1人の社員が特定の作業を抱え込むことで業務が停滞して他の作業員の手待ちが起こる、また、1つの作業しかできない作業員がその作業を終えた後に手待ちが起こる、などが挙げられる。
●「製造フロー表」と「作業レベル評価表」でボトルネックを確認
設備と人材の稼働率とボトルネックの確認のため、「製造フロー表」と「作業レベル評価表」を作成する。
「製造フロー表」は、製造全体の工程と作業状況を整理したもので、各作業で使用する設備名と稼働率、および性能を明記し、各設備の稼働率状況を確認する。
また、各作業のスキル保有人数を明記し、ボトルネックになる可能性のある作業を割り出す。
例えば、工程の中で作業可能人数が1名しかいなければ、これらがボトルネックになっている可能性がある。
「作業レベル評価表」は、製造部門の各作業について、スキルの高さを5段階で評価します。
これにより、人材のマルチタスク化の状況を評価することができ、さらに各人材のスキルについて詳細に確認することができるため、今後の人材育成にも活用できます。
製造管理体制と5S
<確認項目>
- 原価管理
- 生産管理
- 品質管理・
- ロス管理
- 在庫管理
- 5S(製造現場、在庫置き場)
<内容>
●製造管理体制と5Sの分析内容
「原価管理」は、適切な原価管理が実施され、試算表・決算書に必要な原価の要素(材料費・労務費・外注費・経費)が計上されているかを確認する。
また、商品別に原価が算出され、その商品別の原価にも必要な原価の要素を含めて算出しているかも確認する。
「生産管理」は、生産計画を立てているか、生産計画を踏まえて誰がどの作業をどの時間帯で実施するかといった製造計画を立てているか、製造計画通りに作業が行えているか、パートの時間管理ができているか、作業スタッフの指導や改善が行われているか、などについて確認する。
「品質管理・ロス管理」は、まずは顧客が満足する品質の製品を製造する体制が取れているか、具体的には品質を向上、維持するためにどのような取組みを実施し、その取組みは効果があるものかを確認する。
また、各製品の不良率を把握しているか、不良率はどの程度か、不良の原因を追究して改善する取組みができているかを分析する。
さらに、クレームの原因を追究して対策を打つしくみがあるか、それらの履歴を管理しているかについても確認する。
「在庫管理」は、材料・部品、完成品の在庫は適正か、安全在庫の基準があるか、死蔵在庫はないかを確認する。
また、在庫置き場のどこに、何が、何個あるのか確認できるか、それがシステム上でも確認が取れるよう実棚とシステム上の数が一致しているかなども確認する。
「5S」は、各工程で5Sが実施しているか、会社単位で5Sに取り組んでいるかを評価する。全社的に5S活動に取り組むと、整理整頓だけでなく、品質向上や生産性向上、その他社員の取組み姿勢や自立性も促進させることが多いと言われている。
【5S】
- 整理:不要なものを捨てること
- 整頓:使いやすく並べて表示すること
- 清掃:きれいに掃除をしながら、合わせて点検すること
- 清潔:きれいな状態を維持すること
- 躾 :きれいに使うように習慣づけること