スモールPMIのためのビジネスデューデリジェンス(ビジネスDD)⑤ 店舗

目次
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スモールPMIのビジネスDDの店舗チェック項目

スモールPMIでチェックすべきビジネスDDの「店舗」は概ね以下のとおりである。これらについて詳細を明記する。

【スモールPMIでのビジネスDDの店舗チェック項目】

  • 店舗の基本事項
  • 外観・内観、店舗機能
  • 顧客フロー
  • サービス・ホスピタリティと4P
  • 店舗運営管理

店舗の基本事項

<確認項目>

  • 屋号
  • 住所
  • 店舗のコンセプト
  • メイン顧客
  • 店舗面積、収容人数
  • 営業時間
  • 定休日
  • 駐車場台数

<内容>

●コンセプトと基本事項の分析内容

「基本事項」では、店舗活動のベースとなる情報を整理する。

「屋号」は、店舗名と、屋号の意味、そして知名度について確認する。屋号はブランディングの重要な要素であるため、基本的には覚えやすい、読みやすい内容が好ましいと言える。

「店舗のコンセプト」は、まずは主な商品・サービスを確認し、コンセプトである「この店舗に来店した人にどう思ってもらいたいか、どう感じてもらいたいか」について社長や店長の考えを確認する。

そしてコンセプトと商品・サービス、ターゲット顧客にズレはないか、またコンセプトが実際の顧客に正確に伝わっているか、どの程度伝わっているかについて掘り下げていく。

「メイン顧客」は、メイン顧客(実際に来店数の多い顧客層)は誰で、来店目的は何かを確認し、ターゲット顧客(当社が狙っている顧客層)にズレがないかを分析する。

また、メイン顧客がどの曜日・時間帯に来店するのか、どうやって来店するのか(徒歩や自転車、車やバスなど)、さらに、リピーターは顧客全体の何割程度いるかも確認する。

「店舗面積・収容人数」は、店舗面積および収容人数を確認し、店舗の混雑具合を曜日・時間帯別で分析する。

「営業時間・定休日」は、営業時間と定休日を確認し、その営業時間がターゲット顧客に適合しているかも評価する。

「駐車場台数」は、駐車可能な台数と、来店人数に適合しているか、駐車場は見つけやすく駐車しやすいかを確認する。

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外観・内観、店舗機能

<確認項目>

  • 外観
  • 内観① 全体
  • 内観② 各コーナー
  • 内観③ 通路
  • 内観④ トイレ

<内容>

●外観・内観

「外装・内装と店舗イメージ」のフレームでは、外装と内装について、写真を掲載して評価を行う。基本的には「見た目」で特徴があるか、整理・整頓・清掃されているかが評価ポイントである。

「外観」は、外観の印象について、独特の雰囲気や世界観があるか、内部が見えやすいかを評価し、合わせて整理・整頓・清掃の確認も行う。

「内観」では、各々の現場で評価を行う。まず「全体」では、店舗全体の雰囲気がコンセプトに適合しているか、居心地の良い雰囲気か、ターゲット顧客とその来店目的に適合してるかを評価する。

「各コーナー」では、顧客が通る各々のコーナーについて、何か特徴があるか、整理・整頓・清掃されているかを確認する。

「通路」では、通路は整理・整頓・清掃されているか、顧客が通りやすいよう十分な幅があるかを確認する。

「トイレ」では、トイレが整理・整頓・清掃され、清潔さが保たれているか、定期的に清掃するしくみがあるかを確認する。

●店舗機能

店舗の機能とは「訴求機能」「誘導機能」「演出機能」「選択・購入促進機能」の4点で、これらを踏まえて前述の外観・内観を評価する。

「訴求機能」とは、店舗を目立たせる機能で、店舗が目立っているか、魅力が伝わるか、通行人に注目されるものになっているかを確認する。

「誘導機能」は、店内へ顧客を誘導する機能で、店内への入りやすさで、例えば、店頭での演出、入り口の広さや位置などである。

「演出機能」は、商品を魅力的に演出する機能のことで、視覚的な演出や聴覚的な演出がある。

例えば視覚的なものでいうと、内装のデザインや世界観といった店舗全体の演出から、陳列やオブジェ、色彩、照明などです。聴覚的にはBGMなどである。

演出機能は、季節感を出すことも大切なので、季節に応じた取り組みをしているかも確認する。

「選択・購入促進機能」は、見ただけではわからない、商品の違いや良さを顧客に理解させて、商品の選択、購入(注文)を促進させる機能である。

例えば、試食や試着、POP、メニュー表などです。商品の強みや価値などの差別化や魅力が明確に伝わるかが評価の主点である。

顧客フロー

<確認項目>

  • フロー①:認知方法、選択の決め手
  • フロー②:予約
  • フロー③:入店・案内
  • フロー④:サービス提供
  • フロー⑤:見送り
  • フロー⑥:アフターケア

<内容>

●顧客の一連の流れを捉える

「顧客フロー」とは、新規の顧客が、その店舗の存在を知ってから、購入決定し、入店して購入して(サービスを受けて)、退出後にどのようなアフターケアがあるのかという、顧客の一連の動きを示すものである。

それを整理し、どこで顧客に価値を提供できていて、どこに問題があるのかを分析する。

店舗活動では、顧客との接触時、未接触時のそれぞれで、どのような価値を提供できているかが重要な要素になる。

まずは「認知・選択の決め手」は、新規顧客は何でその店舗を知り、何が決め手となって当店を選択したかを確認する。

例えば飲食店では「食べログ」などで、当社の魅力が伝わっているかを見定める。

「予約」は、電話で受け付ける場合は丁寧かつ適切な対応ができているか、自社HPでネット予約を受け付ける場合はストレスなく予約できるしくみがあるかをチェックする。

「入店・案内」では、笑顔での出迎えや、新規顧客に対する適切な案内ができているか、待合室では顧客が心地よくなれる工夫がされているかを確認する。

待合室での顧客の過ごし方で顧客の満足度は変わるのである。

「サービス提供」は、まずはサービスの質が高いかが大きなポイントで、顧客の要望を丁寧に確認しているか、要望に合わせた価値を提供しているかを確認する。

また、メニューやお品書きなどに、自社のこだわりやおススメなどが具体的に書かれており、読むだけで価値が伝わるかも確認する。

さらに、顧客とのコミュニケーションが取れているか、その他顧客が心地よくなれる工夫があるかも評価する。

「見送り」は、店舗に見合った見送りができているかを確認する。

「アフターケア」では、お礼状や定期案内を出しているか、それがCSを向上させ、リピートにつながる内容になっているか、などについて確認する。

なお、定期案内は、競争の激しい場合に顧客を囲い込むのに有効である。また、お礼状は、旅館などある程度単価が高く、訪問頻度の低い店舗で効果を発揮する。

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サービス・ホスピタリティと4P

<確認項目>

  • サービス・ホスピタリティ
  • 商品・サービス(Product)
  • 価格(Price)
  • 立地(Place)
  • プロモーション(Promotion)

<内容>

●サービス・ホスピタリティ

「サービス」とは、従業員がお客様に対して行う「一律」の接客やマナーのことで、ここでは基本的な接客のレベルを診る。

具体的には、「挨拶」「言葉遣い」「身なり」「接客態度」の4点を評価の対象とします。笑顔のないそっけない対応では高い評価は付けられない。

「ホスピタリティ」とは、基本サービスよりワンランク上の「心」のこもったおもてなし、そして1人1人の顧客に対する「個別」の接客を指す。

これは、個々の顧客に「自分は大切にされている」と感じてもらえるような接客ができているかがポイントである。具体的には、満面の笑みの挨拶、顧客に喜んでもらえるような個々の声掛けなどである。

ホスピタリティの方法は様々で、接客だけでなく、顧客が驚いたり感動したりするようなしかけや工夫があるのかも確認する。

●4P

4Pとは、商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の頭文字を取ったもので、自社の強みと問題点を、4Pの切り口から分析する。

4Pは「営業」の項目でも挙げているが、店舗運営の場合、営業活動は基本的に実施しないので、この店舗の章で取り上げる。

「商品」は、商品戦略の他、メインの商品・定番商品に関する差別化や魅力を分析する。商品の機能的価値以外にも、パッケージも含めたデザイン、商品名、そしてセットメニューについても分析する。

「価格」は、市場価格や特定の競合他社、原価など、何を基準にして値付けをしているのか、そして十分に利益が獲得できているか、また高・中・低価格帯を商品戦略的に分類しているかも確認する。

「立地」は、店舗の立地がどこにあり、商圏(顧客が10分で来れる範囲)はどの範囲で、その中に十分なターゲット顧客がいるかを確認する。

また、営業時間内にターゲット顧客となる人が集まる場所か、さらに商圏内に競合がどの程度存在し、競争力があるかも分析する。

「プロモーション」は、各種プロモーションについて、その手法と効果を確認する。また、フロントエンドやバックエンド、アップセルやクロスセルのしくみを取り入れているか、ネット販売や宅配で商圏を広げているかを確認する。

店舗運営管理

<確認項目>

  • 収益管理
  • 在庫管理
  • ロス管理
  • 店長の主な権限と職務
  • スタッフの主な職務

<内容>

●店舗管理

会社全体の収益は「経営・組織活動」で示した決算書や試算表をベースに実施するが、店舗では、POSによる商品別の売上管理を行い、迅速に商品の入れ替えや新商品の投入などに活かすことが求められる。

「収益管理」は、POS管理による商品別の売上・販売数の把握、月単位や曜日単位、時間単位、天候や気温などの管理により、商品の入れ替えや繁閑差に応じた施策を実施できているかを確認する。

「在庫管理」では、現在の在庫に不良在庫がどの程度存在しているか、そして不良在庫を減らす取組みを実施しているかなどを確認する。

「ロス管理」では、ロスには「値引ロス」と「廃棄ロス」が存在し、個々で管理できているか、合わせた合計のロスを把握できているか、それらを削減する取組みを実施しているかを確認する。

●店長・スタッフ管理

店長の主な権限と職務、そしてスタッフの主な職務を右表のとおり整理する。ただし、業種や規模によってもその役割は変わるので、店舗の状況を踏まえて、各役割の重要性を判断する。

飲食店や小売店では、パートとして学生などをスタッフに採用しているが、顧客の満足度を高めてリピーターを獲得するには、働いた経験がほとんどない学生を、顧客の個別の要望に的確に対応できるようにする必要がある。

この状況を早期に実現するためには、店長が各スタッフに対し、事前に教育を行い、現場でも迅速かつ的確に指示を出せることがポイントとなる。

特に1店舗~数店舗の規模では、マニュアルがなく、しくみが構築されていないケースも多くあるので、これらを踏まえ、店長やスタッフの仕事ぶりを評価する必要がある。

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