スモールPMI実践(発展編)(2)事業統合① 問題解決と成長戦略

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スモールPMIの事業統合「問題解決と成長戦略」の概要

スモールPMIの事業統合について、「問題解決と成長戦略」の概要は以下のとおりである。これらについて詳細を明記する。

【スモールPMIの事業統合「問題解決と成長戦略」の概要】

  • 譲渡企業の問題解決
  • 成長戦略の軸は「ブランド経営」
  • 問題解決、成長戦略の取組み方

譲渡企業の問題解決

●問題解決のポイントは問題点を改善策が描けるまで「なぜなぜ分析」で掘下げる

スモールM&Aでは譲渡企業が中小企業でさまざまな問題を抱えている可能性があり、統合の前に解決させる必要がある。しかし、問題を掘り下げずに表面的な問題のまま解決策を実施しても問題は解決しない。

例えば「営業成績悪化」という問題点が判明した時点で、その解決策として「営業教育」を実施しても問題は解決しない。なぜなら、営業成績が悪化した原因は、営業教育で学ぶ内容とは限らないからである。

そのため問題が解決する「真の問題」に到達するまで「なぜなぜ分析」で掘り下げるのである。

「真の問題」とは、その問題をひっくり返して改善策として描けることである。

具体的に営業成績悪化の原因を掘り下げると「営業マンのモチベーション低下」であることが判明したが、なぜモチベーションが低下したのかも不明確なので、モチベーション向上の施策の「目標管理」を導入しても営業成績は向上しない。

そしてさらに掘り下げると、営業担当者は皆営業の初心者ばかりでやり方が分からず、製品もうまく説明ができないことが判明した。

これが真の問題であり、後は真の問題をひっくり返すだけで、各々「営業手法の明確化」「製品説明ツール作成」という解決策を実施すれば、問題は解決する。

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成長戦略の軸は「ブランド経営」

●中小企業が優先すべきは「ブランド経営」

「ブランド経営」とは、経営者がブランド力向上を最重要課題として取り組む経営のことである。

成長戦略を実現するためには強みを活用する必要があるが、「強み」とは具体的に、差別化された要素があること、その要素が顧客のニーズに適合していることである。

そして「成長のために強みを活用する」というのは、強みを磨き上げて企業価値を高め、さらに顧客に浸透させるということである。

この「企業価値向上」と「価値浸透」の活動を最優先に行うのがブランド経営である。

なお「価値向上」は、直接的には、商品開発や改善、サービス力向上を実施すること、「価値浸透」は、自社の価値を明確にして浸透させる営業・販促活動のことである。

近年ではネットを活用して発信することが効果的である。ただし、会社が一体となってブランド経営に取り組むためには、直接的な施策以外に、間接的に価値を向上させる業務も重要である。

例えば、前述した生産性向上や従業員のスキルアップなども、価値向上につながるため、ブランド経営には必要不可欠な取り組みと言える。

●「安定成長」が成長戦略のゴール

成長戦略のゴールは「安定して成長し続けるしくみができていること」である。そのためには、新規顧客が安定して増え続け、既存顧客がリピートする必要がある。

この「新規顧客の開拓」と「既存顧客のリピート化」が自然と行われるようになるために、日々の活動で企業価値向上と価値浸透の双方を実施して、企業のブランド力を向上させる必要があるので、成長戦略にはブランド経営を実践することが重要になる訳である。

問題解決、成長戦略の取組み方

●基幹業務の問題点、強みの抽出

譲渡企業を買収後に統合せず、個別に運営させる場合は、個別に問題解決と成長戦略を実施する必要がある。

問題解決は問題点を抽出して真の問題まで掘り下げて改善策を導き出すこと、成長戦略は強みを抽出してそれを活用した戦略を構築することである。

これをビジネスデューデリジェンスで実施するのであるが、特に重要なのは、事業の基幹業務の問題点、強みを抽出することと言える。

基幹業務は、製造業では「業務フロー」であり、例えば、営業が顧客から注文を受けて、注文内容を工場に製造指示を出し、工場の各工程で製造し、出荷するまでである。

●「顧客フロー」における問題解決、強み活用

サービス業の基幹業務は「顧客フロー」で整理する。

<顧客フロー>

  • 集客・予約

・弱み:「予約サイト」でターゲット顧客と強みが不明確

  • 外観
    • 入店
    • 内観
    • カウンセリングブース

・強み:個々の顧客の要望と特徴に合わせたプロのスタイリングの提案

・弱み:スタッフによってスキルに差がある、育成のしくみ未構築

  • 施術
    • 商品紹介
    • お見送り

美容院の事例で説明していくと、まず顧客が企業に最初に接するタッチポイントは「①集客・予約」での「予約サイト」である。

この予約サイトでは、内装や施術の雰囲気は把握できるが、その美容院の最大の強みは「カウンセリングブースでの個々の顧客の要望と特徴に合わせたプロのスタイリングの提案」であったとすれば、その強みが明記されていなければ、それを望む顧客から選ばれることはない。

この「強み」というのは、顧客が来店する「目的」になるのであるが、それが記載されていないので、この予約サイトの時点で多くの顧客を取り逃していることがわかる。

また「⑤カウンセリングブース」では、弱みとしてスタッフ間でカウンセリングのスキルに偏りがあること、カウンセリングの育成のしくみが構築されていないことなどが挙げられる。

一方で、譲受側の美容院には、譲渡側美容院の強みであるカウンセリング機能がなければ、そこで譲受側にもカウンセリング機能を導入すればいい。

そしてカウンセリングマニュアルを作成し、OJTのしくみも構築することで、短期間で譲受側スタッフがカウンセリングのスキルを習得でき、さらに譲渡側・譲受側双方のスタッフが継続してスキルアップできるしくみを構築するのである。

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