M&A、PMIのデューデリジェンスの種類
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、M&AやPMIで譲受側にどのようなリスクがあるのか、買収に見合う価値があるのか等を判断するために行う調査である。
財務や法務、事業において、ヒアリングや書類の確認、現地調査を実施することで、対象となる企業の実態を見極めていく。
大企業向けには、本格的なデューデリジェンスが必要であるが、細かい調査が必要なため時間と労力がかかり、各々何百万円もかかってしまう。
そのためスモールM&A、スモールPMIでは、短時間で実施する「簡易デューデリジェンス」が有効である。
デューデリジェンスの種類はさまざまあるが、スモールM&Aで必要となるものは、以下の3点である。
【主要デューデリジェンス】
- 財務デューデリジェンス
- 法務デューデリジェンス
- ビジネスデューデリジェンス
財務デューデリジェンスは、売掛金や在庫、土地・建物等の資産を再評価し、簿価ベースの決算書を実態ベースに作り直して、潜在的な財務リスクの有無のチェックを行うことで、会計士・税理士が担当する。
中小企業の決算書には、長年積み重なった不良債権や死蔵在庫がそのまま残っているケースが非常に多いため、簿価ベースでの価値算定は、譲受側にとって大きなリスクになる。
法務デューデリジェンスは、法的権利の有効性の評価や、係争事件の有無、偶発債務等の潜在的な法務リスクの有無のチェックを行うことで、主に弁護士が実施する。
ビジネスデューデリジェンスは、事業の中身をチェックするもので、具体的には、経営や組織、営業・販売や製造など、事業の各機能で問題がないか、そして強みがどこにあるかを確認して、事業面のリスクや成長の可能性を探る。
ただしビジネスデューデリジェンスは、財務や法務のように経営の専門家が実施している訳ではなく、主に譲受側従業員という、ビジネスデューデリジェンス未経験者が行っている。
その理由は、質の高いビジネスデューデリジェンスを実施できるスキルを持ったコンサルタントが少ないためである。
本来であれば、この分野は中小企業診断士が担うべきであるが、ビジネスデューデリジェンスを実施できる中小企業診断士は少数派となっている。
ただし事業再生コンサルタントは、再生企業のビジネスデューデリジェンスを実施するケースが多く、内容はほぼ同等であるため、事業再生コンサルタントがビジネスデューデリジェンスの専門家といえるであろう。
M&A、PMIのデューデリジェンスの実施時期
デューデリジェンスは通常、M&Aで基本合意が締結された直後に実施する。
デューデリジェンスの目的は、譲渡企業を買収した時のリスクや価値を事前に把握することで、買収価格の決定や、買収の是非を判断するために実施する。
そのため、本来であれば買収前に実施すべきものといえる。
しかしスモールM&Aの場合、デューデリジェンスが実施されないケースが多々ある。
なぜなら、買収価格が安価であるため、譲受企業がデューデリジェンス費用を出し渋ることが多いためである。
ただし、中小企業の場合、前述したとおり、大企業のように経営体制が整っている訳ではなく、経営者が属人的に運営している場合も少なくない。
契約状況は曖昧で、決算書も、特にBSは、不良債権や死蔵在庫が多く含まれているなど、実態とかけ離れていることが多くある。
また、事業の中身についても、譲渡側の経営者自身も気づいていない課題が多く存在する。
そのため買収後に、まずは譲渡企業の経営改善に取り組む必要がある。
したがって、もしデューデリジェンス未実施で買収した場合、買収直後に簡易デューデリジェンスを実施することが望ましいといえる。
買収後に譲受側の新社長がしっかりと経営を行うためには、まずは現状把握を行うことが必須である。
なお、中小企業は大企業のように経営体制や組織体制が十分ではなく、社長が属人的に運営している場合も少なくない。
そのため中小企業の経営は、大企業のように、各部門長に任せるだけでは機能しないケースが多々ある。
よって社長自身が事業の中身をしっかり理解しなければ、中小企業の経営は成り立たない。
特に中小企業は、前述のとおり、譲渡企業の買収後、経営統合や関係性構築の前に経営改善に取り組む必要があるケースが多いため、たとえ買収後であっても、ビジネスデューデリジェンスを実施することが望ましいであろう。