事業概要
デイサービス2店舗を運営。
企業規模は、社員20名以上で、売上高は約1億円。
シンプルな組織体制で、管理部門がなく、社長以外は全員現場スタッフという構成で、管理業務はすべて社長が担っている。社長は現場主義で、社長と各店舗の社員とのコミュニケーションは良好で一体感がある。社長や社員は、高齢者の介護に対する意識が高く、利用者満足度を向上させることに努力を惜しまない。
財務状況
財務状況は、収益力が低く、過去5年は営業利益がマイナス。売上高営業利益率は▲10%近くにもなっている。特に無駄な経費はなく、社長自身の役員報酬が高額なわけでもない。従業員1人当り人件費も業界平均よりかなり低い。また借入金は6千万円を超え、売上高借入金比率は60%近くになっていて、債務超過で自己資本比率は▲40%を超えている。
資金繰りも極めて厳しい状況である。金融支援(リスケ)を受けていても資金が不足し、社長は知人から借入をしながら事業を継続している。しかし収益は改善せず、知人からの返済要求もあり、社長自身が追い詰められている状況となっている。
問題点
当社の最大の問題は収益性が低い事である。その原因はさまざまで、具体的には当社の知名度が低いこと、実際に顧客を紹介してくれるケアマネージャーとの関係性が低いこと、そのような中で営業活動も実施していないことである。ホームページはあるが未更新、営業ツールはあるが会社案内レベルの内容の薄いものであり、これを読んでも当社の特徴が理解できない。そのため、チラシを配布してもあまり意味がなく、営業活動でしっかり自社の価値を伝える必要があるが、当社は営業を実施していないため紹介を待っているだけの状態である。
その他、社長はPL/BSの理解が十分とは言えない。業績が悪いことは理解しているが、数字を見ながら施策を検討するには至っていない。
強み
当社は、他の施設では敬遠されがちな、生活保護の高齢者を積極的に受け入れている。また、徘徊高齢者の一時預かりにも対応し、医療機関同行サービスも行っている。その他、外出サービスや多様なレクリエーションなども開催し、高齢者や家族からの受けがよく、リピート率は高い。
ケアマネージャーは常に、生活保護や徘徊高齢者の受け入れ先を探すのに苦労している。つまり直接のターゲット顧客の需要は大きく、競合も少ない。さらに、スタッフの意識も高く、家族からの受けもいいため、ケアマネージャーは安心して紹介できる環境は整っていると言える。
改善策
戦略としては、営業力の強化である。具体的には、まずは自社の強みであり、ケアマネージャーのニーズである「生活保護の受け入れ」「徘徊者の一時預かり」等を全面に出すツールを作成する。これを商圏内のケアマネージャーに営業活動を通じて手渡すようにする。当社は資金繰りが非常に厳しい。そのため、このツールを早期に作成し、積極的に営業活動を実施して、より多くの紹介を得ることで短期的なキャッシュを獲得することが重要である。
次にニュースレターを定期的に配布することで、ケアマネージャーとの関係性を維持する。ニュースレターには、ブランド・アイデンティティ(顧客にどう思われたいか)を明確にして、このツールの目立つところに明記する。これにより、自社の価値を浸透させるという「ブランディング」がルーチン業務として実施できるようになる。こうすれば、ケアマネージャー向けに価値が浸透し、中長期的にも自然と紹介が増えてくると考えられる。
さらに、試算表で予実管理を実施し、経営者が数字で管理でき、PDCAが回るしくみを構築する。これにより、社長自身で自立した経営が実現可能になる。