車検整備・鈑金塗装業/事業再生(事業DD)

事業概要
 車検・整備・鈑金塗装事業を運営。
 企業規模は、社員数は10名程度で、売上が約4億円。
 社長の急死により、急遽、専業主婦であった社長の妻が新社長を務めることとなった。しかし新社長は事業に精通しておらず、組織を統制することができない状況。近年業績は大きく悪化するも、経営改善を指揮する力量はない。ただし、各部門は自立した運営をしているため、事業運営自体には問題なく継続できている状態であった。

財務状況
 近年、業績は急激に悪化しており、直近の営業利益は▲3,000万円(売上高営業利益率▲8%)である。業績悪化の原因は売上の減少であり、従来の固定費を賄えなくなっている。
 そこで、同業者で前社長の知人の支援により、徹底的に経費削減等の経営改善を行い、無駄を徹底的に排除した。その結果、業績は大きく改善したが、試算表では依然として営業利益で数十万円/月のマイナスが出ている。そのため、本業の改善が求められる状況といえる。

問題点
 当社が行っている整備や鈑金、車検の案件別の収益管理の状況を確認すると、原価に材料費や外注費、経費は含まれているが、労務費が含まれていないことが判明。そのため、当社では案件別に正確な収益状況を把握できていないことがわかった。
 また、見積算出方法においては、車検の場合、部品交換や塗装の工賃が含まれておらず、また、陸運局までの交通費等の流通コストも含まれていなかった。さらに、整備・鈑金の料金体系が固定化され、長年変更されていない。特に鈑金は、顧客にから料金が見えにくい。つまり企業側にとって料金のコントロールがしやすいにも関わらず、変更されていない。

強み
 強みとしては、当社は顧客管理システムを導入し、DMによる車検の定期集客を行っている。そして車検で来店した顧客に社長が菓子類を振る舞い、会話を楽しむことで、既存顧客との関係性構築に励んでいる。この、他人にすぐに打ち解け合う社長の人柄の良さは、強みの1つと言える。来店客をもてなし、顧客とコミュニケーションを取ることで、早期に顧客との関係性を構築することができている。
 また、鈑金部門のスタッフは全員スキルが高く、短期間で高品質な作業が可能である。さらに整備部門のスタッフも全員1人で作業が可能なスキルを保有している。

改善策
 改善策は、まずは料金体系の見直しである。具体的には、車検の部品交換時の工賃追加、整備・鈑金の基本工賃の値上げ、鈑金修理価格の値上げである。なお、車検については値上をしない。理由は、顧客が車検の料金に対しては敏感であり、競合他社との価格競争も激しいため、値上げによる顧客流出の可能性が高くなるからである。
 続いて原価計算を見直することである。原価計算に労務費を加えて算出し、正確な収益管理を行うことである。
 さらに、営業戦略を見直す。現在訴求できているのは既存顧客の車検のみであるため、オイル交換についてポスティングで新規顧客の集客を図る。そして、従来どおり、来店した顧客に対して社長が菓子類を振る舞って関係性を構築し、顧客情報を獲得してリピート化を図る。これで顧客を増やしていき、売上増加を図っていくのである。

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