寿司屋/事業再生、ブランディング(実行支援)

事業概要
 創業70年の老舗寿司屋。社長は腕利きの寿司職人である。
 売上高は5,000万円、社員数は社長の他、正社員1名と、パートが10名程いる。
 かつて店は繁盛していたが、売上は徐々に減少した。そこで売上を増加させるために、女性客の獲得を狙ってランチメニューを拡大した。その結果、目論見通りに女性のランチ客は増え、売上は回復したが、人件費等の経費が嵩んで利益は減少した。
 そこで今度は、夜の顧客を増やす取組みを実施。具体的には、低価格な居酒屋メニューを充実させていった。その結果、サラリーマンなど新規顧客は増えたが、昼同様に利益率が減少した。
 これらランチ目的の顧客、居酒屋メニュー目的の顧客の増加により、売上は増加するも利益は大きくマイナスとなり、赤字に陥ってしまった。

財務状況
 上記の取組みにより、営業利益はマイナス。資金繰り難が続いており、リスケと短コロによる金融支援を受けているが、それでも資金繰りは改善せず、金融機関からは短期融資を停止させられてしまい、追い詰められてしまった。

問題点
 問題点は、利益増ではなく売上増に走ってしまったこと、そして本格寿司屋という原点を忘れてしまったことである。ランチメニューを拡大して売上は増えたが、ランチメニューは利益率が低く、ホールの負担が増えてパートを増やしたため人件費が増大し、利益を圧迫。そして夜も、低利益率の居酒屋メニューを拡大し、低利益率の顧客が増えたことでパートを増やし、人件費が増大、昼間と同様に売上は増えたが利益は大きく落ち込んだ。その結果、営業利益はマイナスとなった。
 さらに、これらの顧客対応のため、多くの大学生のパートを採用したため、接客対応が悪化し、本格的な寿司を楽しみにしていた既存顧客が離れていってしまった。

強み
 当社の強みは、社長は腕利きの寿司職人であることである。プロとしてのネタの見極めや、寿司職人としての技、そして仕入先の人脈も豊富である。さらに、老舗として地域の知名度も高く、常連客も多いため、地域で高いブランド力を維持していることである。

改善策
 原点回帰のため、まずはコンセプトを見直した。そしてプロとして「ネタ」「シャリ」「握り方」へのこだわりをあぶり出した。そして寿司屋としての当店に繰り返し足を運んでくれた既存顧客を大事にすることを決めた。これにより、社長自身が今後の方向性を認識することができた。そしてこのこだわりをメニュー表の最初のページに「コンセプト」として設けることで、ブランド力を回復させた。
 ランチメニューと居酒屋メニューを大幅に廃止し、低価格重視の顧客を排除した。セットメニューは、ネタ組み合わせによる原価と利益率のバランスを取って、より魅力的なセットメニューを構築した。
 さらに、社長が既存顧客に対し、原点回帰でメニューを大幅に見直したことを伝え、既存顧客が戻ってくるよう1人1人に声掛けをした。
 その結果、売上は大きく下がったものの、利益は大幅に改善され、短期間で黒字化を実現し、資金繰りも改善していった。それ以降、寿司の品質と、顧客とのコミュニケーションを大事にするという、従来の老舗寿司店本来の姿に戻り、収益はそれ以降も改善していった。

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