事業概要
飲料水などを入れるペットボトルの製造・販売。ペットボトルの材料であるポリエチレンテレフタレートという樹脂を仕入れ、当社で製造して販売している。組織規模は、従業員は10名強で、うち事務員(正社員)1名、残りは現場作業員(正社員は数名、残りはパート)で、社長自身も作業を行っている。
設立は平成に入ってすぐ。しばらく業績は好調であった。しかし、ペットボトル業界の資本集約型化が進み、生産性が向上、大量生産による低コスト化を進める大手十数社の寡占市場になった。また飲料の競争激化により、ペットボトルの機能的な価値に加えて、形状やカラー等のバリエーションが増えるといった情緒的価値にこだわる動きもみられ、カスタマイズの重要性が増えてきた。そのため、金型開発にコストをかけられない中小企業は競争力を失ってきた。
このような外部環境の変化により、近年当社の業績は、設立売上は、以前は2億円近くあったが、近年は1億円程度にまで減少し、ここ数年は営業赤字が続いている。
外部環境
そもそも「ペットボトル製造」という業種は資本集約型である。つまり、多くの設備を導入して機械化を進めて生産性を上げ、コストを削減して価格競争力を高める必要がある。そのため、中小企業では不利な業態である。例えば、中小企業が1時間で100個しか製造できないのに対し、大手が1時間で1万個も製造できる、という具合である。
さらに前述のとおり、飲料水の種類によって色や形状のバラエティが増え、メーカーの要望に応じてカスタマイズすることが求められるため、1個数百万円もする金型を製造する資金力のない中小企業は、厳しい状況となっている。
現在当社は、限られた形状の飲料水向け、つまり固定された飲料水十数種類で、継続して売上を維持している。そしてこのような外部環境の中で新規開拓は困難であるため、現在製造している飲料水が製造中止になれば、当社は自然と売上は減少してしまう。
問題点
厳しい外部環境の中、当社内部にもさまざまな問題点がある。
まずは、業績悪化により人員を切り詰めており、社長自身も作業を行っているため、数値管理が不十分なことである。社長自身も収益状況を把握できていない。
5Sも不十分で、在庫管理ができていない。未使用の在庫が倉庫に放置されており、その倉庫代も無駄に費用がかかっている。
製造面では、成形工程の設備が老朽化されており、機能が低下してきており、生産性は低い。また品質維持のため検査工程を強化している。具体的には、検査に2名の作業員を配置させ、髪の毛や虫の購入を防いでクレーム対策を行っているため、人件費がかかり高コスト体制となっている。なお、大手メーカーの検査工程は完全機械化されているため、検査の品質は高く、スピードも速く、低コストである。
さらに近年、資金繰り難で材料を小刻みに購入する必要が出てきている。大量仕入で大幅に仕入単価を下げられるが、それが難しい状況になっている。
改善策
当社のビジネスモデルは、いかに既存顧客からの受注の中で利益を出していくかがポイントとなる。そのためには、徹底して無駄を排除してコストを可能な限り抑えることである。そして計画生産体制を構築し、資金を捻出して大量仕入を実現し、仕入れコストを抑える。
計画生産体制の構築は、具体的には、各製品の1時間当りの生産量を割り出し、過去の各製品の月別出荷量を把握する。そして各製品の安全在庫を決定し、現在の在庫状況を見える化し、さらに1ヶ月の生産量を決定、これらを週別・日別に展開する。さらに、正御品名・生産個数・作業人数・作業時間を毎日、計画的に作成する。また、出荷数・在庫数についても毎日確認し、安全在庫と在庫の状況をリアルタイムで把握する。こうすることで、緻密なシフト表の作成が可能となり、作業員の手待ちなどの無駄を排除する。