洋菓子製造業/事業再編(事業DD)

事業概要

 売上高100億円を超える大手洋菓子製造業。様々な種類の洋菓子や生菓子を製造販売しており、販売先は百貨店や銘菓売店などである。いくつかのヒット商品も持つ。

 当社は、A社・B社・C社・D社の4つの法人を束ねるホールディングス制で、そのうち1つの法人であるA社が調査対象である。A社は、大量生産と少量多品種が入り混じった商品の製造販売を担当しているが、近年業績が悪化している。そのため、悪化した法人について、B社とC社のいずれと合併させることが望ましいか、あるいはそのままA社単独で存続させるべきかの判断材料として、事業DDを実施した。

問題点

 当工場の問題点は、元々当工場は「少品種大量生産」向けとして設備投資され、ライン設計されているが、実際に製造する商品は「中品種中量」「多品種少量」であり、多くの非効率が生まれていることである。調査で各工程を詳細に分解して検証したところ、様々な非効率が発生していることが判明した。

<設備の非効率の例>

・ 機械化が難しい工程があり、ロット数が多いと一時的に多くの人材が必要

・ 設備があってもロット数が少ないと逆に設備を使うと非効率になるため、設備があっても手作業の工程がある

・ ロット数が大きい商品が少ないため稼働率が極めて低い設備や、ほぼ未使用の設備も混在する

・ 製造する製品の種類が多いため、頻繁な段取り替えが発生する設備が存在する

・ 投入した設備がそもそも製造する商品の特性に合わず、未使用のまま

・ 使用頻度が極めて少ない大型設備がある

・クリスマス商品の時しか使用しない設備がある。さらにその時期では同一商品が大量に製造されるため設備が不足し、結局多くの手作業が発生している

 その他、当社の製品開発は、販売先からの依頼に基づいて行われていた。そのため、ほとんど売れない商品が大量に存在し、それが当社製造体制の非効率を生み、収益悪化の要因の1つとなっている。

検証結果

 判断については、製造面について以下の4点から検証した。

<合併検証の是非>

①    経費削減

②    資源活用(シナジー)

③    合併後の組織再編・運営

④    その他

 詳細の検証結果は割愛するが、結論からすると、単独で存続することが望ましいという結論である。

 上記のとおり、当社の問題の本質は、「元々『少品種大量生産』向けとして設備投資・ライン設計されているが、実際に製造する商品は『中品種中量』『多品種少量』であること」である。そのため、他社と経営統合したところで、A社の業績悪化が目立たなくなるだけで中身は変わらない。経費削減の実現やシナジー効果、合併後の運営についても、従来のままであり、一部管理部門の労務費が削減されるだけで、大幅に改善することは期待できない。

 A社を改善するには、製造する商品に合わせて設備をリニューアルするしかない。具体的には、「中品種中量」と「多品種少量」のラインを分け、同時並行で製造できるようにする。

 そして多品種少量は、新商品について、単に販売先からの要求に応じて作るのではなく、当社主導で開発を行い、顧客のニーズ・ウォンツを踏まえて開発を行うことである。競合他社との激しい競争に勝ち抜くための商品開発・営業・販促活動を行える体制を構築し、「考える集団」に生まれ変わる必要がある。そして売れなければ、自社判断で撤退できるようにしなければならない。

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