美容院(フランチャイジー)/事業再生(事業DD)

事業概要

フランチャイジーで美容院を3店舗運営。FC本部から、業務用商品や技術メニュー、POSシステム、販促物の提供があり、日々の会計業務や決算書も本部で行っている。そして本部に対しては、FC加盟保証金の他、毎月一定額のロイヤルティと店舗リース料を支払っている。

 組織体制は1店舗7~10人で、店長1名、正社員4~6名、パート1~4名という体制、合計27名体制である。

 経営体制は、社長以外はすべて現場スタッフで、当社には管理部門がないため、経営や管理はすべて社長が経営を担っている。そして社長が日頃から店舗に足を運び、状況を店長からヒアリングをして状況を把握している。ただし社長は美容師ではないため、細かいところまでの把握は不十分である。

 ビジネスモデルとしては、フランチャイジーのため、サービス内容や料金で独自性を発揮することができず、美容院という競争が激しくサービス内容が同質化しているため、低付加価値モデルである。そのため、一定レベルの売上のボリュームがなければ利益獲得が難しい。また、特に当社のFC本部は、当社の地域では知名度は高くないため、独自でブランド力を向上させる必要がある。ポイントとなるのは、新規顧客の集客と、1回客をいかに満足度を高めてリピート率を高めていくか、満足度を高めていくためのサービス内容をいかに充実させていくかである。

財務状況

 過去5年はいずれも営業利益がマイナスで、売上高営業利益率は▲10%を超えている状態。資金繰りも厳しく、金融機関からの支援の他、FC本部へのロイヤルティを一部免除してもらいながら事業を運営している状態。根本的な問題は顧客数が黒字レベルに達していないことである。当社のビジネスモデルは前述したとおり、料金体系もサービス体系も基本的に変更が困難であるため、決められた要素の中で、顧客を増やしていく方法を見出す必要がある。

強み

 当社の強みは「カウンセリングルーム」の存在である。このカウンセリングルームで顧客の要望を丁寧に聞き取り、その要望に応じて丁寧にカットすることで、顧客の満足度を向上させ、リピート率向上を図っている。また、FCとして、社員の施術レベルを向上させるしくみ、そして技術レベル向上の昇進・昇格のしくみが存在し、社員のスキルとモチベーションの双方が向上する体制が構築されている。

問題点

 一方で問題点としては、社長や店長、各社員が、この「カウンセリングルーム」を強みとして認識していないことである。つまり、「カウンセリングルームでの顧客の対応で、顧客の要望を丁寧に聞き取り、その要望に応じて丁寧にカットすることで、顧客の満足度を向上させ、リピート率客を獲得する」ことの理解が不十分なのである。そのため、カウンセリングが機械的な作業になり、効果が十分ではない。

 また、美容院専用のサイトでの集客でも、自社の強みのカウンセリングルームを一切アピールしておらず、価格訴求していることである。そのため、低価格を求める顧客ばかりを集めてしまっており、リピート率が伸び悩んでいる。

 その他、カウンセリングのスキルを向上させるための育成・指導体制がないことである。丁寧な接客と、個人の要望とプロのアドバイスを融合したコーディネートが、顧客満足度を向上させるが、そのレベルに達しているスタッフは数名しかいない。ここの暗黙知化したノウハウを形式知化し、技術レベルと合わせてカウンセリングスキルも向上させいかないと、このシステムは持続的に効果を発揮することは難しい。

改善策

 改善策は、1つめはカウンセリングのスキルを向上させるノウハウの体系化と育成システムの確立である。年齢、顔の輪郭や大きさ、髪のボリュームや髪質などの様々な要素を踏まえて、どのような提案が好まれるのかを全員に共有し、日々ブラッシュアップするためのしくみ作りを行うことが重要である。

 2つめは、集客サイトで、価格訴求ではなく、当社の強みを明確にした集客を行うことである。つまり「カウンセリングルームで、プロの施術師が丁寧に要望を聞き、1人1人に合った髪型を提案する」ことを前面にアピールする。これにより、リピートしやすい顧客をより多く集めることが可能となる。

 最後にもう1点、満足度が向上した顧客に紹介制度を確立し、紹介してもらうようにする。これにより、顧客も紹介しやすくなり、リピートしやすい顧客を自然と増やすことが可能となる。

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