革型製造・革加工業/事業再生(実行支援)

事業概要

 元々革型の製造会社であり、鞄や靴、手袋などの、革の型の製造販売を行っていた。かつて業績は良かったが、安価な海外メーカーの参入と市場の低迷により売上は減少し、革の加工も行うようになった。しかし市場は低迷し、業績の悪化は留まらず、長年赤字が続いている。当社は金融機関からの借入も実施していないため、利息の支払いや返済の負担がない。しかし営業利益で毎年数百万円のマイナスが出ており、その補填を長年社長の個人マネーで補っていた。しかし、社長の資産も底をつきかけており、これ以上個人資産を会社に投入することが難しい状況になっていた。

 当社は、社長の他、現場作業員が5名ほどいた。社長は裁断の技術者であり、社長自身も現場に出て業務を行っていた。社員5名の中には、配達しかできない人材や、限られた設備しか使用できない人材もいた。社員の手待ちも多いが、社員は自由に残業をしており、それに対して気の優しい社長は何も指摘できていない。

 営業担当者はおらず、営業活動はほとんど実施していないため、既存顧客との取引のみである。また、本社は2階建ての賃貸物件であり、1階で現場作業を行っていたが、2階は一部使用しているだけでほとんど使っていない。

改善策

 毎年数百万円のキャッシュアウトで社長個人が補填しており、さらに社長の個人資産も底をついている状態現状であるため、早急に黒字化を実現することが必須である。現在の売上では、現状の固定費を賄うことができず、需要も低迷し、営業活動で新規を獲得するにも実現可能性は高いとは言えず、できたとしても時間がかかる。

 このような状況では、大幅な経費削減でキャッシュアウトを減らし、利益を獲得するしかない。具体的には、まずは不要なスペースは賃貸契約を解除すること、そして社員に残業をさせないこと、それでも不十分な場合は、社員のリストラである。

 賃貸契約は、社長自身が一人で交渉することができないため、社員を連れて交渉するようにした。「攻撃三倍の法則」というのがある。これは、戦闘において有効な攻撃を行うためには相手の三倍の兵力が必要となる、とする考え方である。これは交渉にも応用することが可能であり、交渉の場では相手の3倍の人数で臨めば有利な立場に立つことができる。もちろん相手次第の話ではあるが、これにより、社長1人では言い出せなかった契約解除の要求を、社員を連れて行くことで、契約を解除することができた。

 続いて社員の対応であるが、残業を禁止することだけでは不十分であったため、リストラを断行することになった。リストラは、スキルの高い、マルチタスクが可能な人材を残した。

 これらにより、短期間で大幅な経費削減が実現し、短期間で営業利益の黒字化を達成した。極めて単純な経費削減策ではあったが、社長個人では決断できなかったのである。

 経費削減が完了し、次は売上アップの施策である。具体的には、まずは当社の強み、顧客のニーズを洗い出した。そして、顧客の悩みで、当社で実現可能なものをあぶり出した。

 顧客の悩みとしては、「複雑なデザインでは抜型で価格的・技術的にも実現できない」「少ロットの抜型は価格が高い」「パソコンでデザインしたものを、型紙に作るなどのアナログの部分が大変で、データでやりとりしたい」というものであった。これらの3つの悩みを解決するというフレーズと、具体的な方法を明記した1枚の営業ツールを作成し、営業活動を実施することとした。ターゲットリストを作成し、1社1社丁寧に訪問し、作成した営業ツールを渡して丁寧に説明していった。

 その結果、少しずつではあるが、新規顧客を獲得できるようになった。すでに既存顧客で黒字化するところまで改善しているため、今後は、この営業活動を継続して、さらなる収益力向上を図っていくこととなった。

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