フレキシブルコンテナ洗浄/事業再生(事業DD、実行支援)

事業概要

 フレキシブルコンテナを洗浄するビジネス。フレキシブルコンテナ(フレコン)とは、ポリエチレンなどの石油化学誘導品や穀物、飼料、土砂などの粉状物質(細かな粒状の製品)が0.5~1t入る巨大な袋であり、これらの粉状物質を梱包・輸送するために利用される。

 当社が扱うフレコンは、15年の長期間繰り返して利用される。粉状物質を入れるため、洗浄の際はこれらの粒をすべて取り除く必要があり、合わせて水分をはじめとした異物混入も許されず、確実に除去する必要がある。ただし実際のところ、1回の洗浄で取れない汚れもあり、競合他社は1回洗浄しか実施していないため、多少の汚れの残りは許容されていると言える。

 社長はこだわりが強く、中途半場に洗浄することを許容できず、納得できる完成度を高めることをモットーとしており、それを作業ルーチンとして構築している。

 洗浄工程では、洗浄から乾燥はすべてラインによる自動運転であり、洗浄、乾燥工程に独自の技術を使っている。そして汚れ具合がひどい場合は自動洗浄1回転では汚れが落ちないため、残った汚れについては手作業で行うか、人員が足りない場合は2回転の洗浄を行う。そのため、競合他社と比べて品質が高いが、これら2回転目の洗浄、および手作業の洗浄については、料金を請求していない。

 洗浄・乾燥が終わった後に検査を行うが、この検査工程は人の手で実施し、作業スピードと、一部一定の技術を必要とする。また、検査の結果、傷や穴、取り付け口の不備などが発見された場合、修繕を行う。この修繕はすべて人の手によるものである。そのため、ライン全体で見ると、洗浄・乾燥は全自動であるが、その他の検査、結束等の工程は人の手による作業で、その作業が膨大であるため、労働集約型となっている。

 また、洗浄・乾燥・検査・結束という一連のルーチンの他、フレコンの穴や傷、取り付き口の不備などが発見された場合、修理作業を行っている。これも高人件費の要因の1つとなっている。

財務状況

 業績は以前より低迷しており、赤字になる年度も多い。さらに近年、競争激化による低価格競争が激しくなり、売上は減少傾向で、営業利益は大きくマイナスに落ち込んでる。

問題点

 最大の問題は、見積料金算出時の原価計算に労務費が含まれていないことである。「自動洗浄」の設備があることで、労務費を加味せず原価を算出しているが、洗浄以外の多くの作業工程で膨大な人員作業が発生している。そのため、設定された料金で見積を行うと、極めて低収益になり、赤字に陥ることもあることである。労働集約型モデルであるにも関わらず、見積料金の原価に労務費が入っていないのである。

 また、汚れ具合が大きい場合は手作業での洗浄や2回転目の自動洗浄を行うが、これらは「社長のこだわり」によるものなので追加料金は請求していない。

 その他、修繕作業は有料ではあるが、相当な時間を要するが修繕料金は安く設定されている。無料で実施することもある。本来であれば修繕は、この修繕作業は他者が実施していないため「高付加価値」と言えるもので、適性料金を請求すべきである。

 このように、最大の原価である労務費が含まれない原価計算による見積料金が、当社の収益悪化最大の要因である。そして案件単位で原価を算出したところ、利益率は非常に低く、赤字である場合もあった。

改善策

 改善策は、過去の案件を踏まえて原価を再度計算し直し、適性原価を算出すること、そしてその原価を踏まえて料金設定を見直すことである。

 当社のビジネスモデルは労働集約型であるため、原価に労務費を追加することは必須である。ただし、競争が激しいため、現状のしくみの中で料金だけを見直すと、料金が大幅に上がってしまって顧客の許容範囲を超えてしまう。そのため、作業ルーチンの見直しも必須であると言える。

 具体的には、2回転目の自動洗浄、および手作業の洗浄は行わないこと、もし2回転目の自動洗浄や手作業の洗浄を実施するのであれば、追加料金を請求することである。 さらに、修繕作業の値付けも見直し、他社で実施しない「付加価値サービス」として十分な利益が出るようにする。

 無料で修繕を行うことは絶対にしないようにする。

 上記の改善策を提案し、実行支援に入った。そして過去150件程度の案件を再整理し、かかった原価を算出した。これらを踏まえ、適性料金を検討した。

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