競合激化での弱小パチンコ店/事業再生(事業DD)

パチンコ業界は、通常の業種と異なり、極めて特性の強い業界である。そのため、その特性を知った上で検討することが必須である。

パチンコ業界の特性

(1)メーカーの力が強い業界構造

 パチンコ業界のパワーバランスは、供給サイドである遊技台メーカーの力が強い。

 主な理由は、主要メーカーはシリーズ化された人気機種を持っており、顧客は人気のある機種に集中する傾向があるためホールはそれを大量購入する必要があるが、メーカーは、人気機種の販売をそれ以外の機種と抱き合わせ販売を条件にしたり、継続的に当該メーカーの機種を購入しないと人気機種を販売しないためである。

(2)装置産業で、資金力を要する

 パチンコホールは装置産業である。これは、1ホールを新規出店するのに数億~数十億円という多額の資金を必要し、さらに、定期的に遊技台の入替えという設備投資が必要になるためである。

 そのため、資金力のある大手に優位であり、資金力の乏しい中小企業にとって厳しい業界であるといえる。古い台では顧客は集まらないのである。

(3)規制強化による顧客流出

 パチンコホール営業は「風適法(客に射幸心をそそる恐れのある営業を規制する法律)」により規制を受けている(射幸とは、偶然に得られる利益をあてにすることであり、その度合いを「射幸性(ギャンブル性)」という)。

 ホールの営業も遊技機の販売・設置もそれぞれ公安委員会の許可が必要で、射幸心が高まる恐れのある遊技台やホールの営業方法であった場合は公安委員会から規制を受けることになる。 こうした規制により、マーケティングや販促も大きく制限されており、サービス業や飲食業など、一般的な店舗系ビジネスのように集客することが難しい。

(4)立地で8割決まる

 パチンコホールの競争要因で最も重要なものは「立地」と言われており、営業上の成功要因の8割は立地で決まると言われている。好立地は、駅前・郊外店ともに、多くの住民が住み、交通量が多い場所であるが、好立地は競合も多いため、競争に勝ち抜くには、ホールの大きさ、洗練さ(豪華さ等)が重要となる。

 つまり、人気の最新機種を定期的に導入し、好立地で、かつ洗練された大ホールであることが勝つための要因であり、資金力の乏しい中小企業にとって極めて厳しい業界であると言える。

事業概要

 当社は、交通量の多い国道の近くに立地しているが、国道から少し入り組んだ道路沿いにあるためアクセスが悪く、駐車場も小さいため、立地としては良くない。この国道沿いには競合が多く、大手が運営する大ホールもある。そのため、大手の大ホールには人が大勢詰めかけているが、当社も含めて小規模ホールは閑散としている。

 また、当社のパチンコ台は、1機種1台のバラエティ構成となっており、選べる環境になっている。その他、中高年層に人気の機種を揃えている。しかしながら、中古が中心であるため強みにはならない。

 当社のメイン顧客は近隣の高齢者である。近隣は住宅街で高齢者も多く住んでおり、その一部の住人が固定客となっている。しかし年々顧客は減少しており、売上の減少傾向も歯止めが利かない状況となっている。

 なお、パチンコ店の2階は、事務所以外に、未使用の大きなスペースがある。

改善策

 当社が単独で生き残っていくには、現在の延長戦で戦略、戦術を考えても、もはや先は見えている。このままパチンコ店だけを運営していても、業績改善は見込めない。そのため、早めに次の事業を見え据えて戦略を練る必要があると考える。

 当社近隣は住宅街で、高齢者も多いため、高齢者向け事業を実施することである。従来とは異なる事業であり、構造的に転換する必要があるが、まずはパチンコ事業を運営しながら、2階の空きスペースで、高齢者向けのサービスを行う。

 例えば、アイデアレベルではあるが、「麻雀」や「脳トレ」、可能であれば「介護サービス」などである。

 当社の強みは「高齢者が多く住む住宅街が近くにあること」「広いスペースがあること」である。そのため、高齢者をターゲットとし、高齢者にニーズのある、広いスペースが必要なサービスを徹底してブレストを行い、当社で実施可能なサービスを実施していくことが望ましい。

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