食品スーパー/事業再生(事業DD、実行支援)

■事業概要

 地方の食品スーパー。

 3店舗を運営しており、新たに1店舗を設立したが、大きくマイナスとなり改善の見込みが立たないため1年程度で撤退、現在は3店舗で運営している。

 売上高は数十億円を稼いでいたが、売上は年々減少し、営業利益はプラスとマイナスを繰り返す状況となっている。

 特に3店舗の中の1店舗は、近隣に大型スーパーが建設されて顧客が流出してしまい、大きく売上を落としている状況である。  

■問題点

 課題 当社は新鮮な魚介を強みとし、鮮魚コーナーは昔ながらの魚屋を再現した作りとなっている。

 ただし、鮮魚担当は寡黙なスタッフが多く活気がなく、顧客に声掛けすることもない。

 また、魚を丸ごと販売することにこだわっており、加工品が少なく、さばいた魚を部分的に購入したいという顧客のニーズを捉えられていない。

 そのため、売残りも多くなっているが、その売残りを惣菜などに展開できておらず、廃棄ロスも多くなっている。

 また、魚丸ごとの販売は、加工品より利益率は低くなるため、鮮魚をウリにしているが鮮魚の収益状況は良くない。  

 なお、当社にとって高利益率を獲得できるのは弁当・惣菜である。

 しかし、弁当・惣菜の種類は限られており、競合他社と比べて魅力度は低い。

 また、同じ種類を繰り返しているため新鮮味がなく、顧客を固定化できていない。

 さらに、週に1,2回、チラシで集客しており、チラシを配布する日の開店時間10時~12時に多くの顧客が来店している。

 しかし、弁当・惣菜を出すのが12時を過ぎているため、せっかくの多くの来店客を、高利益率の弁当・惣菜につなげられていない。  

 また、店舗全体では、競合他社と同様の商品が並んでおり特徴がない。

 そのため「安売り合戦」となり、店内には「値引POP」が目立つ。  

 さらに経営面では、社長のワンマン体制であり、例えば新たな店舗を開店する場合も、調査を行わずに即決するため、前述のとおり1年で撤退してしまった。

 また社長は思いつきで現場に指示するケースも多く、現場スタッフのモチベーションは下がっており、スタッフの業務改善やCS向上への意識も欠如している。  

■改善策

 改善策は、徹底した「差別化戦略」と、自社のブランド力を向上させる「ブランド戦略」を実行することである。  

 差別化としては、まずは競合他社では売っていない、そして顧客が魅力的に感じる様々な商品を仕入れて販売することである。

 そしてそれらを定期的に実施し、それらを試食やPOPで各商品の魅力を伝えることで、安売り競争から脱却し、顧客がワクワクしながらショッピングを楽しむことができるしくみを作る。  

 弁当・惣菜は、定期的に弁当の新メニューを開発して、通常の弁当よりも高い値段で販売する。 そしてこれらの魅力をPOPで紹介する。

 これにより、値段ではなく商品の魅力で購入してもらえるようにして、低価格競争を回避する。  

 さらに、チラシとは別に、来店客に対してレジで毎月1回、ニュースレター(NL)およびセールスレター(SL)を配布する(A4用紙1枚で、表がNL、裏がSL)。 NLは、店舗スタッフの紹介や、日常的な内容を紹介し、顧客との距離感を縮め、顧客に当社スタッフに対して親近感を持ってもらう。

 そして裏のSLには、今月の弁当の新メニューや、新たに仕入れたその他の商品の紹介を行い、訴求力を高める。  

 その他、顧客のニーズに合わせて鮮魚を加工し、売残りは弁当・惣菜に回して廃棄ロスを削減する。

 また、惣菜は11時~12時には陳列できるようにして、早朝の顧客が弁当・惣菜を購入できるようにする。  

 このように、差別化を図りながら価値を高め、その価値を発信するという「差別化戦略」と「ブランド戦略」を実行し、現場スタッフも巻き込むことで、スタッフのモチベーション向上も図っていく。  

 なお当社は、売上規模はある程度大きいが、ギリギリの人材で運営しているため、新たな人材や、新たな部門を作ることができない。

 そのため、これらを前店舗で迅速に運営するためのしくみ作りが重要となる。

 具体的には、新商品の開発や、新たな商品を仕入れるための役割を明確にし、手順も構築する。

 特に弁当は、3店舗同時に開始する必要があるため、レシピ、材料の量、原価を迅速に作成するフォーマットを作成し、スムーズに運営できるようにすることが重要である。

  • URLをコピーしました!
目次