靴卸売業/事業再生(事業DD)

事業概要

 当社は靴の卸売業で、社員7名の小規模事業者である。

 数年前に、大口取引先であったホームセンターが他社に吸収され、当社の売上高数億円がほぼなくなってしまい、業績は一気に悪化した。

 その後、社員のリストラを行い、現在の7名まで社員数を減らして対応しているが、営業利益はマイナスであり、依然として厳しい経営状況が続いている。

 当社の主なターゲットは大手量販店であり、エンドユーザは低価格志向の一般家庭である。

 商品は靴関連全般で、スニーカー、革靴、長靴など、低価格商品に絞って老若男女の幅広いターゲットに合わせ、幅広いアイテムを取り扱っている。

 具体的な営業・販促活動は、バイヤーの要求に適合した商品を提案し、量販店の折込チラシに当社の商品を掲載してもらえるようにすることである。

 量販店の要求に柔軟かつ機動的に対応することで、継続取引を維持している。   

問題点

 課題の1つめは、量販店に依存した経営体質である。

 販路が量販店のみであるが、近年購買層はネット通販や専門店に流れているため、リスクが高い状況を回避できていない。

 ホームページもなく、SNSも未実施で、自社の情報(強み)を発信できる体制も構築できていない。

 さらに自社オリジナル製品がないため、低価格競争から脱却できていない。

 2つめは、発注・仕入・在庫・出荷をシステムで一括管理できておらず、すべて手作業で実施しているため、業務が非効率なことである。

 特に在庫管理は、在庫表と棚卸表の2通りの管理を併用しており、双方とも手書きで管理しているため、極めて生産性が低い。

 3つめは、経営者が収益状況を把握できていないことである。

 試算表も発行しておらず、毎月の収益状況を把握できていない。   

強み

 強みは、様々なメーカーと直接取引を行っており、海外生産品を安く仕入れるルートが確立していることである。

 また、品質向上のため、中国の工場での検品を徹底しているため、品質トラブルは起こしていない。

 なお、中国工場への提案によるオリジナル商品の販売は可能である。   

改善策

 当社のターゲットは量販店で、エンドユーザは低価格志向の一般消費者であるため、レッドオーシャンで勝負するビジネスモデルとなっている。

 つまり、単品を高利益率で販売することができず、販売量を増やさなければ十分な利益を獲得できない。

 そのため、まずはシステムで業務を一括管理する体制を構築し、受発注や在庫管理のシステム化により業務の効率化を図り、高コスト体制を見直すことである。

 このように、まずはコストを一気に削減することで、現状の売上高でも利益が出る体制を構築する。

 続いて、自社オリジナル製品を企画し、量販店の依存体質を脱却することである。

 大手シューズメーカーのような高機能な製品は商品開発が困難かもしれないが、従来品に+αで付加価値を付けたり、デザインを重視した商品などであれば、自社開発は十分可能と思われる。

 そして一般消費者に直接販売できる体制を構築して、大量に販売しなくても「利益率」で勝負できる商品群を作り上げる。

 その上で、ホームページやSNSで発信し、ブランド力向上を図る。

 さらに、月次決算を行い、収益管理体制を構築して、経営者の収益に対する意識を向上させることである。

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