スモールPMIの管理統合「法務」の概要
スモールPMIの管理統合について、「法務」の概要は以下のとおりである。これらについて詳細を明記する。
【スモールPMIの管理統合「法務」の概要】
- 管理機能の構成
- 法務① 法令遵守等
- 法務② 会社組織等に関する内部規程類等の整備状況とその内容の適性性
- 法務③ 契約関係を含む外部関係者との関係の適性性
管理機能の構成
●譲渡側の経営基盤確立のための管理機能の実態把握
譲受企業・譲渡企業が、グループとして管理機能の連携を図り、経営基盤の整備・強化を行うためには、「人事・会計・法務・IT」など、共通して保有する管理機能の実態を把握することが重要である。
経営実態の把握については、M&Aの検討段階からビジネス・財務デューデリジェンス等を実施して情報の収集を行うなど、早い段階から対応の検討を行うことが望ましいと言える。
しかし、スモールM&Aの場合はデューデリジェンスの実施が難しいことも多いため、その場合は譲受後速やかに簡易デューデリジェンスを実施し、譲渡側の経営者や管理者、従業員へのヒアリングを行うとともに、各種の経営管理の帳票などを精査することで現状を把握し、譲渡側のリスクや課題の洗い出しを行う。
●課題やリスクの整理と行動計画の策定
管理機能の統合において検討すべき項目は多数あるが、多くの中小企業は資金面や人員に制約があり、全てに対応することが困難である。
そのため、譲受企業・譲渡企業それぞれの経営継続の観点から、リスクの大きさや課題の重要性、緊急性、実行可能性などを検証し、優先順位付けを行ったうえで対応することが望ましい。
また、実際の行動計画を策定する際には、「誰が・いつまでに・何を・どのように行うのか」を明確にして、ミーティングなどを通じて定期的に進捗の確認を行い、必要に応じて見直しを行うことが必要である。
ここでは、管理面において主な注意点を「人事・労務分野」「会計・財務分野」「法務分野」「ITシステム分野」の4つの機能別にまとめている。
法務① 法令遵守等
●外国人労働者の雇用
少子高齢化の影響などにより労働人口の不足が顕著となっており、建設業や農業、飲食店など多くの業種において外国人労働者が就業するようになっている。
労働力不足を補うなどの効果もあるが、様々な注意点もあり、気づかないうちに法令違反になる恐れもあるので、代表的なポイントについて確認する。
●その他の法務面のリスク
M&Aの譲渡会社が許認可事業を行っている場合は、譲受後も許認可が活用できるか確認しておく必要がある。
建設業や飲食業、不動産業、運輸業、産業廃棄物収集運搬業など、許認可等が必要な業種は多岐にわたる。
それぞれの許認可ごとに引継ぎの要件が異なるので、引継ぎ可能か事前に確認しておく必要がある。 決められた要件を満たし、期限内に管理者の変更等の手続きを行わないと違法営業となるので注意する。
法務② 会社組織等に関する内部規程類等の整備状況とその内容の適性性
●中小企業の社内規程の整備状況
社内規程とは、会社独自で定める社内ルールである。法律で義務付けされた就業規則以外にも、文書取り扱い規程やハラスメント防止規程など、社内の秩序維持や業務を効率化するために、様々な規程が存在する。
しかし、中小企業では、社内規程が一切存在しない会社も珍しくない。
以前は特に規程を設けなくても問題になることは少なかったかもしれないが、インターネットやSNSの普及により、個人の情報収集能力や情報発信力は飛躍的に高まっているので、会社と従業員の双方を守るためにも、最低限の社内規程は整備するようにする。
法務③ 契約関係を含む外部関係者との関係の適性性
●下請法の概要
下請法とは、下請事業者の利益保護と取引の公正化を目的として、優越的な地位にある事業者が発注者(親事業者)、小規模企業などが受注者として業務を受託する場合に適用される法律である。
発注者が優越的な地位を濫用して、代金の支払いを遅らせたり、不当な廉価で業務を行わせたりしないよう、以下の義務と禁止行為が定められている。
また、下請法の対象となる取引は以下の4つの委託業務と定められている。
- 製造委託
- 修理委託
- 情報成果物作成委託
- 役務提供委託
また、適用については以下の通り、資本金の額の格差によって判断されることになる。