事業概要
当社は江戸時代から続く老舗の酒蔵である。
大吟醸、純米大吟醸、純米酒、特別純米酒、本醸造といった、普通酒以外の「高級レギュラーシュ」という位置づけの商品を取り揃えている。
日本酒は「淡麗辛口」が流行する中、当社は清酒本来の旨味が味わえる「甘口」にこだわった商品展開を行っている。
なお、平成に入り、鑑評会で数々の賞を受賞するなど、一定の知名度もある。
業績
数々の賞を受賞するが、売上は低迷し、過去10年営業利益が続いている。
また、直近の売上高借入金比率は200%を超え、借入過多の状態である。
この借入は、20年程前に、業績好調の中で大幅な設備投資を一気に断行した際のものである。
しかし設備投資以降売上は低迷し、その後赤字へ転落し、業績が回復しないまま現在に至っている。
問題点
課題 問題点は、淡麗辛口のニーズが高まる中、甘口にこだわった商品展開を実施してきたことである。
清酒本来の味が出る甘口へのこだわりが強く、市場のニーズに合わなくなってきたのである。
甘口を好む世代は高齢化し、近年の日本酒ブームの主役は、スッキリとしたクセのない辛口である。
そのニーズに対し、徹底的に反発する商品戦略を打ち出し続けてきたため、新たな日本酒好きの消費者に受け入れられなかったのである。
また、原材料の米にも徹底的にこだわりを持って製造しているが、商品の特徴や取組み姿勢、製造や材料へのこだわりについて、外部に発信していない。
「いいものを作れば売れる」という、昔ながらの職人の考えが抜けていないのである。
このように、当社の大きな問題は、マーケティングの視点が欠如したことである。
改善策
改善策は、現在の日本酒好きのニーズに合わせた酒造りに軌道修正することである。
具体的には、甘口を残しつつ、後味スッキリの淡麗辛口の商品を増やすことである。
そして当社の原材料や製造工程のこだわりを発信し、差別化を図っていく。
それを踏まえ、地元ではなく、東京や海外への展開を図りながら、ブランド力を向上させていくのである。
当社は様々な賞を受賞しているため、その実績を活かしながら、積極的なマーケティング活動を実施していくことが必要である。