スモールPMI実践(発展編)(4) 管理統合② 会計・財務

目次
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スモールPMIの管理統合「会計・財務」の概要

スモールPMIの管理統合について、「会計・財務」の概要は以下のとおりである。これらについて詳細を明記する。

【スモールPMIの管理統合「会計・財務」の概要】

  • 管理機能の構成
  • 会計・財務① 会計・財務関係の処理の適正化
  • 会計・財務② 譲受側・譲渡側間の会計・財務手続の連携
  • 会計・財務③ 業績等の管理
  • 会計・財務④ 金融費用削減

管理機能の構成

●譲渡側の経営基盤確立のための管理機能の実態把握

譲受企業・譲渡企業が、グループとして管理機能の連携を図り、経営基盤の整備・強化を行うためには、「人事・会計・法務・IT」など、共通して保有する管理機能の実態を把握することが重要である。

経営実態の把握については、M&Aの検討段階からビジネス・財務デューデリジェンス等を実施して情報の収集を行うなど、早い段階から対応の検討を行うことが望ましいと言える。

しかし、スモールM&Aの場合はデューデリジェンスの実施が難しいことも多いため、その場合は譲受後速やかに簡易デューデリジェンスを実施し、譲渡側の経営者や管理者、従業員へのヒアリングを行うとともに、各種の経営管理の帳票などを精査することで現状を把握し、譲渡側のリスクや課題の洗い出しを行う。

●課題やリスクの整理と行動計画の策定

管理機能の統合において検討すべき項目は多数あるが、多くの中小企業は資金面や人員に制約があり、全てに対応することが困難である。

そのため、譲受企業・譲渡企業それぞれの経営継続の観点から、リスクの大きさや課題の重要性、緊急性、実行可能性などを検証し、優先順位付けを行ったうえで対応することが望ましい。

また、実際の行動計画を策定する際には、「誰が・いつまでに・何を・どのように行うのか」を明確にして、ミーティングなどを通じて定期的に進捗の確認を行い、必要に応じて見直しを行うことが必要である。

ここでは、管理面において主な注意点を「人事・労務分野」「会計・財務分野」「法務分野」「ITシステム分野」の4つの機能別にまとめている。

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会計・財務① 会計・財務関係の処理の適正化

●譲渡側の会計処理の誤りへの対応

中小企業の会計処理において不適切な処理や誤りがあっても、そのまま放置されていることも少なくない。

誤りなどが検出された場合は、修正申告をするとともに、なぜ不適切な処理や誤りが発生したのか、原因を突き止め再発を防止することが必要である。

もしその修正によって費用が発生する場合は、表明保証条項等により、前経営者に対して費用負担の請求を行う場合もある。

●会計処理等のルール化

中小企業の会計処理では、月次決算を行っていない、事業別の管理を行っていない、棚卸未実施で実際の在庫量が把握できていないなど、業績を正しく管理するための運用がなされていないことが多くある。

また、現金管理についても規定がなく、事務所の金庫に多額の現金が保管されていたり、その現金の実査が行われていないこともあり、横領につながりやすい環境になっている場合も少なくない。

そのため、会計処理等のルール化は、業績の月次管理や現金管理のルール化、チェック体制の構築、在庫管理の適正化などの視点で行うようにする。

不正やミスなどが発生しにくく、発生した場合でも原因の特定が容易になる方法を検討することが望ましい。

その他、財務会計分野での規程規則の作成は任意となっているため、ほとんど存在しないことの方が多いのが実情である。

グループ全体での内部統制を強化するためにも、財務会計部門においても規程規則の整備も重要となる。また、業務効率化の観点から処理ルールなどのマニュアル化も検討する。

会計・財務② 譲受側・譲渡側間の会計・財務手続の連携

●譲渡側との会計・財務手続きの連携

中小企業のうち特に経営者が高齢な場合は、いまだにほとんどの伝票等の処理を紙で行っているケースも多く、そのような企業は紙の伝票を顧問税理士に渡し決算書を作成している。

決算書や総勘定元帳のデータにおいても紙のみで保存していない場合も見受けられ、譲受側が会計・財務手続きの連携に苦労することもしばしば見受けられる。

そのような場合は、譲渡側に譲受側と同様の会計システムを導入し、管理しやすい環境の整備を急ぐことが望ましい。

●会計システムの統一

中小企業では、会計システムは導入しているものの、税務申告のために実施しており、申告に必要な最低限の管理しか行っていない会社が少なくない。

今後は、譲受企業が管理しやすいように管理会計の導入も検討が必要である。

会計システムにあたっては、譲渡企業と譲受企業それぞれの事業特性や会計システム変更後の利便性の向上や発生コストなども踏まえ、会計システムを統一することが望ましい。

また、譲渡企業が会計システム未導入である場合には、今後の電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も必要なことから、早急な検討が必要である。

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会計・財務③ 業績等の管理

●管理会計の導入

会計制度は大きく3つあり、それぞれの特徴は以下の通りである。

  • 税務会計:課税当局に開示することが目的であり、税法上認められた方法で処理を行う
  • 財務会計:外部の利害関係者への情報開示が目的
  • 管理会計:経営者をはじめ、社内の意思決定に必要な情報を提供することが目的

中小企業の決算書のほとんどは税務署へ申告するため税務会計の視点のみでまとめられている。

PMIにおいては、譲渡企業の業績を的確に把握し意思決定できるよう、管理会計の導入が求められる。

管理会計とは社内の意思決定に必要な会計制度であり、事業別・商品別の収支管理や年度予算の策定や実績の管理などを行い、会社の実態把握や意思決定を行うための判断材料となる。

●原価計算制度の導入

製造業や建設業などでは、製品等を製造する際にどの程度の費用が掛かっているか正確に把握することが必要である。

原価は「原材料費・労務費・外注費・経費」といった要素で構成されているが、多くの中小企業では決算書を作成した後にこれらを確認するに留まっている。

そして、顧客に見積もりを提示する際に原価の計算を行っておらず、一つの製品や受注単位での損益が分からないまま受注していることもしばしばである。 適正な販売価格を設定するためには、原価計算制度の導入が必要である。これにより一製品当りの原価を正確に把握することができ、不採算となっている製品や顧客を把握し、改善につなげることができる。

会計・財務④ 金融費用削減

●グループ全体での金融費用の削減

譲渡企業の既存借入金は、地元の信金や信組との一行取引の場合も多く、条件の悪いまま継続して借入れしていることも少なくない。

M&A成約後の早い段階で、譲受企業の信用力などを生かし、より有利な条件で資金調達が可能か、借り換えや新規の調達を含めて検討する。

また、譲受企業が譲渡企業の代わりに資金調達を行い、グループ内で資金を融通することでグループ全体での有利子負債の軽減を図り、コストシナジー効果を図ることも可能である。

譲渡企業の既存借入金の引継ぎの際は、新たに譲受企業の代表者が経営者保証を引き継ぐことが一般的である。

しかし、平成26年2月から適用された「経営者保証に関するガイドライン」では、金融機関は新規借入・借換・事業承継時などで経営者保証が障害となる場合、以下の要件を満たすことで経営者保証の解除を検討することを期待している。

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